仕事が捗っていることの「落とし穴」

ここまで、ネガティブな感情スイッチがオンになって仕事に着手できないときや、気が重くなるような仕事でつい着手が後回しになってしまうときに、ぜひ試していただきたい工夫を説明しました。ここでは、順調に仕事が捗っているときの「落とし穴」について考えてみましょう。

みなさんは、仕事に集中できているときに、どんなことを考えますか?

「今の流れを止めたくない」「キリのいいところまでは、この調子でやってしまおう」と思う人は多いでしょう。休憩を取るのも「キリのいいところまで終わらせてから」と考えるのが当たり前ともいえます。確かに、ひと区切りついたところで休憩を入れたほうが、気分的にも落ち着いて休めるし、仕事の効率も上がるはずと思えます。しかし、ここに意外な「落とし穴」があります。

じつは、「キリのいいところまでやった」というスッキリ感が、心理的な完了状態を生み出してしまい、再スタートを鈍らせてしまう可能性があるのです。みなさんの中にも、キリのいいところで休憩を取ったら、休憩が思いがけず長引いてしまい仕事の再スタートが遅れ、しかも再スタートしてからもなかなか調子が上がらない、そんな経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか。

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心理的な「未完了」の状態をつくり出す

休憩前に作業をいったん完了してしまったことで、また仕事に戻ろうとする(再スタートする)のに、時間がかかっているのです。ここでは、休憩後、速やかに再スタートするための具体的なステップと方法を紹介します。

じつは、意図的に、心理的「未完了」状態をつくり出すことがポイントなのです。

STEP1 「キリのいいところ」を見定める

まず、費やせる時間と作業プロセスを勘案して、通常であれば、このあたりで区切ると「キリがいいよね」という中間目標を見定めます。キリのいいところ(中間目標)を定めることで、進捗度しんちょくどが測れ、達成意欲もわく、というメリットもあります。もし、見事に計画通りとなれば、心理的に「完了」状態が生まれやすく、一方で、計画未達成になると「未完了」状態を生みやすくもなります。

STEP2 意図的に心理的「未完了」状態をつくって、休憩に入る

STEP1で定めたキリのいいところ(中間目標)に対し、あえてその一歩手前の中途半端なところで作業を終えて、「着手中」の状態で休憩に入るようにします。休憩中も中断した作業のことがなんとなく頭の隅にあって、常に気にしているような状態にしておくことで、再開したときの起動時間を短くすることができます。