あえて中途半端なところで終わらせたほうがいい

心理的「未完了」状態を意図的に作り出すにはどうすればいいのか。ポイントを示します。

【心理的「未完了」状態をつくり出す方法】
・基本パターン:「キリのいいところ」の一歩手前で作業を中断する
→休憩後にすぐにとりかかるべき作業のメモを残すと効果的

・応用パターン:「キリのいいところ」まで作業してしまった場合

→あえて次の作業の最初の一歩まで手をつける

どちらにしても、あえて中途半端なところで作業を終えて、「着手中」の状態で休憩に入るようにします。休憩中も中断した作業のことがなんとなく気になっている状態を作り出すのがポイントです。

【まとめ】
あえて「キリのよくない」のところで休憩に入る

多くのビジネスパーソンは「会議や打ち合わせが多すぎて、自分の仕事をする時間がない」と思っているでしょう。つまり、時間さえあれば「もっと仕事が捗るのに」と。ところが、実際は時間に余裕があるときほど、危機感や緊張感が失われ、作業効率が落ちやすいということもあります。

研修先の受講者からも、リモートワークで自宅に仕事を持ち帰り、翌日1日かけて資料を仕上げようと思ったのに、結局、ほとんど進捗せずに1日が終わってしまった、という話をよく聞きます。「時間があるのに仕事が捗らない」は、「会議や打ち合わせが多すぎて仕事が捗らない」よりも深刻な悩みといえるでしょう。

細かく休憩を挟む「ポモドーロ・テクニック」

時間をムダにしている、ムダな時間を過ごしているのとほぼ同じで、先輩や上司、同僚からも「仕事のできないヤツ」というレッテルを貼られかねません。「時間があるのに仕事が捗らない」、そんな状態を回避するために、トヨタグループでは休憩時間を重視しています。

森琢也『トヨタで学んだハイブリット仕事術』(青春出版社)
森琢也『トヨタで学んだハイブリット仕事術』(青春出版社)

前項では、心理的「未完了」状態で休憩に入ることの効用を説明しましたが、ここでは仕事の効率を高めるための休憩時間の設定の仕方を3ステップで説明します。特別な設定方法があるのではなく、シンプルに「何時間に1回」といったように設定するだけです。

ただし、大事なポイントが1つあります。それは、「先に休憩時間を決める」ということ。先に休憩時間を決めてから、全体の作業時間を設定していくのです。具体的に3ステップを説明します。

STEP1 始業から終業までの時間の中で、先に休憩時間を設定する

効果的に休憩を取るための最初のステップは、「先に休憩時間を設定する」ことです。それでは、どれくらいのペースで休憩時間を設定していけばいいのでしょうか。その際に参考になるのが「ポモドーロ・テクニック」です。これは「25分作業したら必ず5分休む」という、タイマーを活用した時間管理手法です。連続で作業を続けるより5分の休みを入れることで生産性が高まるし、作業を小さく分けてこなしていくので、精神的な疲労も溜まりにくいとされています。

「時間枠」を意識することで計画的に進められる

ポモドーロ・テクニックの基本は25分ですが、研修講師として多くの受講者と接していると、厳密に25分でなくても、20~30分で5分程度の短い休憩やリフレッシュタイムをはさむのが、人間の脳にとって集中力を保つのにちょうどいいと感じます。もし、1時間半くらいかかる仕事の場合は、それをざっくり30分×3セットくらいに分けて、その間にリフレッシュタイムを入れるイメージです。

このように休憩を先に設定することで、“コマ(時間枠)”が明確になります。会議も打ち合わせもない、まとまった作業時間を確保できたときは、そこに落とし込むタスクの洗い出しをするよりも先に、まず休憩時間を決めて、“コマ(時間枠)”を明確にします。

STEP2 休憩で区切ったコマにそれぞれタスクを割り振る

STEP1で休憩を先に設定したことで作業時間をいくつかに区切ることができたら、タスクをそれぞれのコマに割り振ります。こうしてメリハリをつけることにより、作業ステップが明確になります。

STEP3 コマを終えるごとにタスクの進捗状況を確認して必要に応じて調整する

区切りを設けることで、ステップごとにこまめに作業計画(予定)と実際の進捗状況を確認、照合できますし、必要であれば修正を加えることもできます。休憩時間に作業のやり方や進め方についてカイゼンや改良を考える機会をつくり、「気づいたら1日終わってしまった!」という事態を防げる点もメリットの一つです。

余談ですが、ポモドーロ・テクニックは起業家で作家のフランチェスコ・シリロ氏が提唱したもので、「ポモドーロ」はイタリア語で「トマト」の意味。イタリアの一般的なキッチンタイマーがトマト型だったことが由来です。

【まとめ】
「20~30分で5分休む」を1セットとして仕事を組み立てる
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