「自分が決めているかどうか」が幸福度を左右する
なぜ1年なのか。10年、20年前とくらべて、ビジネスの世界は急速にスピードアップしている点が挙げられます。DXやAI化などデジタルの潮流は日々刻々と進化するほど、圧倒的なスピード感があります。時代の流れがこれだけ激しい中で、3年はあまりに長すぎます。
そうしたサイクルでは「3年は様子を見て今の会社で頑張ろう」と待っている間に、3年後、ますます世の中は進化しています。3年の時間があれば、「今年はダメだったけれど来年は改善しよう」と猶予が生まれ、集中力が散漫になることもありえるでしょう。
「自己決定理論」という理論があります。これは、自己決定の度合いがモチベーションや成果に影響するという理論です。その考え方は人の幸福感にもつながります。
じつは幸福度合いは、年収の多寡や企業規模の大小よりも「自分が決めている」ほど高まります。自分で1年と決断して、やりきろうと決意して行動すれば、期間は短くても吸収できるものは多く、結果も出やすいでしょう。
キャリア形成は最終的に「自分がこれだ」と思った道を選択し、集中していくことです。しかし、その前段階として自分の選択肢を広げていくことが大事です。そのための活動が制限される点で「石の上にも3年」は今の時代の価値観には合わず、自分らしいキャリアを形成したい人が手放さなければならない固定観念でしょう。
社長のひとことで翌日転職し、大成功
では、一刻も早く今の職場を辞めて転職活動をすればいいか、というとそうではありません。辞めるタイミングは、年齢や年月など「最適なものはない」のも事実です。
大手企業に9年ほど勤めてから起業したKさんという男性がいました。彼が会社を辞めたのは期の途中で、中途半端な時期でした。そのきっかけを作ったのが、彼が勤めていた会社の当時の社長だったそうです。
その社長はメンターのような存在で、Kさんが将来は起業したい意志があるのを知っていました。会うと時々、「会社はいつ辞めるの?」と聞かれ、そのたびにKさんは「まだちょっとタイミングが……」と答えていたそうです。
ある時、社長から「今しかないベストなタイミング、なんて誰にもわからない。それでも君はこの瞬間も、1秒1秒の命を削っているんだよ」と言われました。この言葉を受けて、Kさんは翌日に退職届を出して、起業を果たしました。いまやテレビ局から取材を受けるほど、Kさんが起こした事業は成功を収めています。