転職を成功させるには、どういった点に注意すればいいのか。延べ1万人以上にキャリアに関する講義をしてきたパーソナルナビ代表の漆沢祐樹さんは「人間関係や環境など、外的要因を理由に転職すると失敗しがちだ。今後、自分がどうありたいかという明確なビジョンが見えているのであれば、タイミングを待たずに転職したほうがいい」という――。
頭を抱えた男
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「転職するのがフツウ」だから失敗も多い

テレビやインターネットで転職広告が活況です。実際に目にしない日はないと言ってもいいほどで、2022年はハイクラス転職を中心に求人CMの放送回数が過去最多になったというデータもあります。

かつては新卒で入った会社で働き続け、課長、部長と出世するのが多くのビジネスパーソンにとっては常識でした。しかし、最近は転職を重ねてキャリアアップをしていくスタイルが、20代、30代を中心に浸透してきています。

ただ、年々活発化する転職市場にも関わらず、失敗してしまうケースもあります。私自身、キャリア支援を行うスクールの講師をしていく中で、さまざまな人の話を見聞きしますが、失敗する人には「共通点」があると考えています。

それは、転職する際の大きな要因が「外的要因」であることです。「上司やメンバーとのコミュニケーションがうまくいかない」「親元から離れたい」といった理由で転職活動をするケースです。

人間関係がイヤで転職したのに、また悩みの種に

転職がうまくいかなかった2つのケースを紹介しましょう。

1つ目は「早く実家を出たい」という理由で、上京を決意して福祉業界に転職して東京都内で働き出した方のケースです。働き始めると仕事自体は大変ではなかったようですが、夜勤に入らないと収入が増えない現実がありました。連日の夜勤がたたり、徐々に体調が悪化して、5カ月で再び転職するはめになりました。

2つ目のケースはより深刻です。5年ほど医療関係の会社に勤めるも、上司との馬が合わず鬱になり転職を決意します。お金を稼げる肉体労働の職に就きますが、うまくいかず、転職先の人間関係でも悩むことに。その後は、友人の紹介で貨物運送の仕事を始めました。

高収入を得ることができる反面、休みはまったくなく、労働時間も1日12~13時間。心身ともにボロボロになり、あえなく8カ月で再転職をすることに。彼は「仕事とは何だろう」「人間関係とは何だろう」と悩むようになり、一方で詐欺に引っかかって90万円ほど失うなど、人生はどん底に。今はまったく別の製造業に就いていますが、再び転職を考えているそうです。