同書では、顧客が消費チェーンをうまく辿れるよう、アマゾンが指標をいかに活用しているかが説明されていて、アマゾンの消費チェーンの輪の1つである「選択」についての例もあげられている。

ここでの顧客の行動は、商品を選んでオンライン上のショッピング・カートに入れることだ。

同社は、取り扱う商品を書籍以外にも拡大しはじめた当初、商品詳細ページを増やせば増やすほど、顧客により多くの選択肢を提供できて、売り上げも増加すると予想した。

そしてその指示のもと、小売りチームは新たな商品詳細ページを急激に増やしていった。だが残念ながら、それほど多くの選択肢を追加しても売り上げ(アウトプット指標)の向上にはつながらなかった。

さらに困ったことに、指標分析チームが調べたところ、小売りチームがページ数を増やすために、需要があまりない商品まで追加していたことが明らかになった。

そこで、指標分析チームは「指標」にする数値を「商品詳細ページの閲覧回数」、すなわち「ページビュー」に変えた。

だが、これも完璧な指標とは呼べなかった。顧客が、ある商品詳細ページに辿り着き、商品を詳しく見て買おうとすると在庫切れだったりするからだ。

その結果、また新たな指標が考え出された。

それは在庫のある商品のページビューだった。

このほうが役に立ったが、アマゾンの成功のカギと考えられていた要因「多くの商品が48時間以内にお届け可能」についての情報が盛り込まれていなかった。

結果、最終的に導入された指標は「在庫があり、即時発送可能で2日間以内にお届けできる商品の詳細ページの閲覧率」だった。

これはやがて「即時発送可能な在庫あり商品(ファスト・トラック・インストック)」と呼ばれるようになった。

この指標の特徴は、従業員が管理報告する必要もなければ、データの意味を読み取る必要もないという点だ。

つまり、従業員たちはそういったことをしなくても、やるべき仕事を自己管理で行って、顧客にすばらしい体験を提供できるというわけだ。

何をすべきかを指図する必要性をなくせば、従業員たちは、顧客にどんなよいサービスを提供できるかについて「上の承認が不要な」視点で考えられるようになる。

そう、あなたがいちいち管理しなくてもよくなるのだ。

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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