自民党の政治家が同じ投稿をしたらどうだったか

法政大学法学部教授の河野有理氏や、ジャーナリストの石戸諭氏が指摘するように、もし、与党系の政治家が、蓮舫氏と同じ内容をポストしたら、どうだろうか。蓮舫氏や朝日新聞は、言論弾圧だとして非難するのではないか。ジャーナリストの佐々木俊尚氏も、7月17日に放送されたラジオ番組(ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」)のなかで、ダブルスタンダードになる可能性を指摘している。

与党であれ野党であれ、賛辞であれ批判であれ、公人たる政治家への発言は、できる限り尊重されねばならない。自由主義(リベラリズム)と民主主義を掲げる国=日本においては、なおさらである。対象が誰であれ、権利を著しく侵害しない限りにおいて、どんな言葉も遮られてはならない。それこそが、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」で「都民の声を聞く」と評価された蓮舫氏がとるべき態度ではないのか。

ただし、こうした経緯をもって、蓮舫氏や「リベラル」を叩くことに終始してはならない。今回の事案は、「インターネット以後の組織と個人」という、より広いテーマを突きつけているからである。

個人の投稿が「組織全体」にまで波及している

哲学者の東浩紀氏は、昨今の大学教員によるXなどでの過激と思われる物言いについて、次のように分析している。

・社会的に評判が落ちても学内の評価に関係しない
・同僚や論壇編集者とのあいだでエコーチェンバーが起きている
・学内でもそこそこ偉い立場にあることが多く、下の世代は異議を唱えにくい
といった要因が複合した結果、自意識の肥大が止められなくなっているのだと思います。

この文章を書いている私自身、東氏が指摘する「社会的な評判」が落ちているのかもしれない。今野氏のポストをめぐる騒動に照らせば、より重要なのは所属する組織との関係である。今野氏は、勤務先の朝日新聞に(まで)、元国会議員から「抗議ならびに質問状を出したい」と言われている。ひとりのポストが、組織全体にまで波及しているのであり、私自身に照らすと勤務している神戸学院大学に対して、たとえばこの文章をきっかけに、抗議や質問状が、元国会議員から来るかもしれないのである。

神戸学院大学には、私よりも遥かに有名な方がたくさんおられる。政治資金問題で著名な上脇博之氏や、元キャリア官僚の中野雅至氏は、さかんにメディアで発信しているが、その発言は、どれほど大学側の意向に沿っているのだろうか。