エンジニア3700人超から“10人”の精鋭に選ばれたワケ

ケース2:GMOインターネットグループ ITエンジニア 小島慶一
担当は「お名前.com」のサーバー構築・設計監理など。シエスタができるのは渋谷にある同社第1・第2本社で計32席。第1本社の場合、照明が薄暗くリクライニングシートで“横”になれる。第2本社では、間仕切りもあり個室感覚。仮眠するのにちょうどいい傾斜のシートだ。

ストレス過多な現代において、IT系エンジニアのメンタルリスクは他の職種より3倍高いとされる。

技術開発は日進月歩で納期に追われる激務は、この業界では常。完璧主義者も多いといわれ、心身の疲労が知らずのうちに蓄積してしまうケースもある。

インターネットインフラ事業を中心に展開するGMOインターネットグループ(東京・渋谷)が社員に昼寝(シエスタ)を推奨し、そのスペースを提供し始めたのは10年以上前のこと。今、昼寝OKの企業は少なくないが、同社は先駆け的な存在だ。頭をクリアにし、クリエーティブな発想を生み出す助けとなるようにと会社が導入を決めた。

現在は正午に社内アナウンスで「皆さん、シエスタをしましょう」と流れる。当初は、「会社で寝る」ことに罪悪感を抱く社員もいたが、最近は1日約100人が利用し、午後イチは予約が取れない日もある(12〜20時に利用可)。

正午ちょうどに「シエスタをしましょう」と社内にアナウンスが流れる。

入社23年目のエンジニア・小島慶一さんは週1〜2回ペースで使っている。

「特に、午後に集中力を要する大事な案件の仕事があるとき、一度頭をまっさらにして目を閉じ、リクライニングチェアやソファで30分間脱力します。軽くまどろむ感じですが、効果絶大です。眠気を吹き払うために、ランチ後に社内を歩いたり、デスクで眠気と格闘したりしながら仕事をすることもあるのですが、効率はいまひとつ。でも、シエスタをすると2時間かかった案件が30分で片付くことも。4倍速の自分に生まれ変わるんです」

同社第2本社の昼寝スペース(渋谷駅前のビル16階)は、光がたっぷり差し込むガラス張りの「特等席」。

再開発・建設中の渋谷駅周辺の大パノラマを一望できる。長時間、モニターなどを凝視しなければならない電子の世界からつかの間、解放されるわけだ。半個室になっており、読書の場としても利用可能だという。

「エンジニアの仕事では、会社から電話連絡が入り、やむなく深夜にシステムの調整など緊急対応しなければならないことが月に1〜2回発生します。その場合、夜中2〜3時から明け方まで作業することもあって、睡眠のリズムや体調が狂いそうになるときに昼寝は本当に助かります」

予約の取れない絶景シエスタ席の昼寝で仕事4倍速「100万円」ゲット

小島さんはこれまでの仕事の実績に加え、シエスタ習慣で定着した4倍速の仕事術の効果もあり、24年度の同社の「デベロッパー(開発者)エキスパート」に任命された。

計3700人以上いる各分野のエンジニア・クリエイターからその分野の“第一人者”を毎年度10人選ぶもので、“活動費”として通常の仕事の予算とは別に、使途を本人が決められる100万円(年間上限)が支給される。

同社は、このシエスタスペースのほかに、プロのマッサージを受けられるスペース、ジム、そして無料で栄養バランスが緻密に管理されたおいしい食事を社員に提供しているカフェ(24時間365日オープン)など、福利厚生に以前から力を入れてきた。

その背景にあるのは、同社が掲げているビジョンである「健康経営」。経営トップが、社員の業務効率やパフォーマンスをアップするために、うらやましいほどの投資をしているわけだ。

ちなみに、同社は15期連続の増収を達成している。シエスタを含めた「人財」を生かすための福利厚生と企業業績には密接な関係がありそうだ。