※本稿は、黒岩麻里『「Y」の悲劇』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
なぜ女性の平均寿命は長いのか
世界トップの平均寿命をもつ日本ですが、図表1を見ていただくとおわかりのように、データがある全ての年において、男性よりも女性の平均寿命の方が長いことがわかります。男性よりも女性の方が長生きの傾向がある、多くの方がご存じのこの事実、実は世界的にも同様の傾向が見られます。
なぜ女性は男性よりも長生きなのでしょうか?
男女の寿命の違いについては、様々な研究が行われています。その中で、特に大きな要因として考えられているのは、遺伝子、性染色体、ホルモンの違いです。特に女性ホルモンについては、女性の健康に大きく影響しており、そのため寿命にも関係しているといわれています。
コレステロールという分子が、男性ホルモンや女性ホルモンをつくる原材料になっていると、第1章でお話ししました。
コレステロールは、私たちの身体にはなくてはならない重要な脂質のひとつで、ホルモンの材料となる以外にも、細胞膜をつくる材料や、脂肪の吸収を助ける胆汁酸の材料にもなります。さらに、髪や皮膚を滑らかにしたり、神経伝達にも働くと考えられています。ですので、私たちの血液の中にコレステロールは、常に存在しています。
コレステロールの「善玉」と「悪玉」の違い
そしてコレステロールには、「悪玉」と「善玉」がいると聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
この表現から、身体にすごく悪いコレステロールと、すごく良いコレステロールの2種類があると思っている人も多いのですが、実は両者はコレステロールとしては同じものです。
違いは、血液中を移動するときの状態にあります。コレステロールは脂質、つまり脂ですから水に溶けないので、そのままでは血液に溶けて体内を移動することができません。ですので、血液に溶けやすい特殊なタンパク質などに包まれたカプセル状となり、血液中を移動します。このカプセル状の物質をリポタンパク質といいます。
リポタンパク質は何種類かに分けられますが、このうちHDLと呼ばれるリポタンパク質でできたカプセルは、余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す役割をもっています。そのため、このカプセルに包まれたHDLコレステロールを「善玉コレステロール」とよびます。