悪玉コレステロールと女性ホルモンの関係

一方で、LDLとよばれるリポタンパク質のカプセルは、身体中にコレステロールを届ける役割をもっています。

コレステロールを届けること自体は必要なのですが、LDLが増えすぎると血管内にコレステロールが蓄積してしまい、血管を傷つけたり血管の内側を狭める原因となります。ですので、LDLコレステロールを「悪玉コレステロール」とよぶのです。

そして女性ホルモンは脂質の代謝に深く関わっており、LDLコレステロールを抑える働きをもっていると考えられています。つまり、女性ホルモンを分泌している女性の身体では、悪玉コレステロールが抑えられ、結果的に心血管疾患や動脈硬化になるのを防いでいるのです。

実際に、日本を含めたほとんどの先進国において、心筋梗塞などの心血管疾患や動脈硬化の罹患率は、女性よりも男性に多く、女性ホルモンがこれらの病気を予防していると考えられています。しかし、閉経を迎え女性ホルモンの分泌が低下した女性では、急激にLDLコレステロールが増加します。高齢になるほど女性での心筋梗塞による死亡率が上がるという報告もあるため、女性でももちろん注意が必要です。

高齢女性の肩を抱く医療従事者
写真=iStock.com/andreswd
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男性は「長寿ホルモン」が少ない

また、「アディポネクチン」とよばれるホルモンも、寿命に関係しているといわれています。

アディポネクチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、血管の内皮細胞に働きかけて動脈硬化を抑える働きをもっています。また、先にお話しした善玉のHDLコレステロールを増やす働きや、糖尿病を抑えたり、抗炎症作用もあることから、様々な生活習慣病の予防に働いていると考えられています。そのため、「長寿ホルモン」や「健康ホルモン」ともよばれます。

このアディポネクチンの分泌量は、一般的に男性よりも女性の方が多いといわれています。

なぜこのような性差が生まれるのかという疑問に答えたのが、男性ホルモンがアディポネクチンの分泌を阻害しているという研究報告です。男性は女性よりも多くの男性ホルモンを分泌しているがために、長寿ホルモンの恩恵を女性よりも受けにくい、という状況なのです。

肥満や内臓脂肪が蓄積すると、アディポネクチンの分泌量が減ることも知られています。この分泌量は、肥満度を示すBMIの値と強い相関があることが報告されています。つまり、内臓脂肪を減らすことでアディポネクチンの分泌量が増えることが期待できるので、内臓脂肪型肥満にならないようにすることは男性にとってはより長寿の秘訣となりそうです。