給料大幅増の人も……丸の内に現れた“昼寝マシン”の正体

東京・丸の内のビジネス街で昼寝も可能な「ひと休み空間」が話題だ。三菱地所が昨秋から新規事業(実証実験中)として運営しているシェア休養室「とまり木」。近隣の企業のビジネスパーソンを中心に、毎日数十人が利用しており、平日は必ず来るヘビーユーザーもいる。現在、契約申請した法人は25社以上。そこに属する社員1人につき予約なしで1日1回15分利用可能だ。

ここの売りは最新の“昼寝マシン”ともいえる装置があること。

「仮眠だけでなく、足腰や脳疲労など利用者の多様なニーズに応えるバリエーション豊富なテクノロジー機器を揃えています」(三菱地所・丸の内運営事業部専任部長の三輪弘美さん)

中でも、人気なのが、トヨタ自動車が開発した「TOTONE(トトネ)」だ。外見はカプセル状で、中にあるゆったりしたシートに横たわる。

トヨタ自動車が開発した「TOTONE」
カーテンを閉めると暗い空間に。トヨタ自動車が開発した「TOTONE」(「とまり木」にある装置は一部仕様が異なるデモ機)。

「カーテンで仕切ると中は暗くなって、ヘッドフォンでヒーリング音楽を聞くと、すぐウトウトに。ヒーターも入っていて体がじんわり温かくなります。終了時には背中にあるエアが膨らんで目覚めストレッチが始まり、シートが自動でやさしく体を起こしてくれます。一日中PC作業やWEB会議で残業も多いですが、おかげで集中力が切れがちな午後も仕事を頑張ろうという気になります」(毎日利用する30代男性)

同じく毎日TOTONEを利用している、仕事が財務関係の30代男性は、

「頭がクリアになることでいいアイデアが浮かぶようになって、残業時間が減ったのに、タスクの消化量がぐんと増えました。仕事の実績も自分でも驚くほど向上しました」

男性の会社はベースアップのような給与制度はないが、結果的に、今春から年収が大幅に上がったと笑顔で語る。

仕事量が5倍になるファイテン製とは

一方、ファイテン製の「ウォーターウェーブベッド」は女性ウケがいい。研究所勤務で日々、多くの申請書を書く専門職の40代女性は言う。

「平均睡眠時間が5時間くらいでいつも寝不足気味です。頭に血がいかないと半日かけても1枚も申請書が仕上がらないこともあるんです。でも、これに寝て、頭や背中、下半身を水流振動で刺激されると、気づけば寝落ちしてて(笑)。明らかに血流がよくなって体ポカポカ。1日の仕事量が5倍以上になりました」

スクリューノズルからの水流が、インナーマッスルまで働きかけることでリラックス効果が得られるそうだ。

ファイテン製の「ウォーターウェーブベッド」
ファイテン製の「ウォーターウェーブベッド」。このシェア休養室は契約法人の社員が仕事のスキマ時間などに自由に訪問可能(10~18時)。

取材すると、「午前寝」や「夕方寝」をする利用者もいることがわかった。

「経営者や士業の方などが午前中においでになり15分間休むと『頭の中が整理できていい』とおっしゃいます。また、その日の夜の残業に備え夕方に寝て、体力を温存する方もいますね。時には、大事なプレゼンが思い通りにいかず、それが終了後に『いったん気持ちをリセットしたい』と仮眠する方もいます。来たときより表情が明るくなって、お帰りになります」(三輪さん)

「とまり木」には月経痛やPMSでつらい女性など体調不良の方のための個室ベッド(2時間まで・予約制)があり、肩こり・腰痛の改善に導いてくれるプロのトレーナーが常駐している。

前出の機器で癒やされる前に、体をストレッチしてもらうとリセット効果が高まるそうだ。トレーナーは継続してできる簡単な体のほぐし方を教えてくれるので、整体やマッサージに通わずにすんだという利用者も。

「このシェア事業が軌道に乗れば、近隣エリアや他の街などにも新規で出店したいです。行政とも組んで、こうしたひと休みできる施設で自然と健康になれる文化を醸成していければと願っています」(三輪さん)

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年7月5日号)の一部を再編集したものです。

(取材・文=大塚常好 撮影=堀 隆弘(小島慶一さん、三菱地所) 図版作成=大橋昭一)
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