犯罪の域にいる鉄道カスハラたち

実際、同社が公表した悪質クレームの事例が、カスハラの域を超えてほぼ犯罪ともいえるレベルなのだ。日々このようなトラブルと向き合い、対処されている駅員や乗務員の皆さまのご苦労には頭が下がる思いである。

・「お前なんかクビにしてやる!」「早くしろクズ!」などと暴言
⇒状況に応じて「名誉毀損罪」「侮辱罪」など

・車掌をスマホで撮影
⇒「迷惑行為防止条例違反」「軽犯罪法違反」など

・駅の自動改札を突破/グリーン券を持たずにグリーン車に乗車
⇒「鉄道営業法違反」

・違反を指摘したら乗務員室のドアを蹴る
⇒状況に応じて「器物損壊罪」など

・「土下座しろ!」など威圧的な言動を繰り返し
⇒「強要罪」

写真=iStock.com/coward_lion
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カスハラ客に構ってくれる従業員はもういない

これまで、どれほど面倒な客でも神様扱いされ、丁寧に対応してもらえていたのは、あくまで「若い労働力が」「安い賃金で」「いくらでも雇える」という一時的な人口ボーナスタイムの恩恵があったからに過ぎない。

しかし、今や少子高齢化と慢性的な人手不足により、「『若い労働力』というだけで希少価値」の時代に突入している。豊富な労働力を前提に回っていた社会のさまざまな仕組みが回らなくなり、今まで人が対応してくれていた業務は、自動券売機、自動配膳ロボット、自動精算機などに置き換わっているのだ。

JR東日本方式の毅然とした対応が他社でも広がっていけば、少人数で対応しないと運営が回らないお店などでは、店員さんを呼びつけ、「この機械の使い方分かんないんだけど‼」と文句を垂れて手間をかけさせる客や、ましてや暴言や怒号、理不尽なクレームをつけるようなカスハラ客はどんどん切られていくことになるだろう。

しかも2023年9月からは、精神障害を労災認定する時の心理的負荷の基準に、新たにカスハラも盛り込まれるようになっている。人手不足が深刻化している時代、組織がいかにして従業員の心身の健康を守り、安全な労働環境を提供できるか否かは、働き手にとって今後重要な選社基準となるであろうし、客側もサービス提供側のこのような変化に対応していかなくてはならなくなるだろう。