そうやって調べるから、知識が頭に残るのであって、人の話を聞き流しているようでは身に付くことはない。こう言ったのです。

もちろん、頭ごなしに叱りつけたわけではありません。こういうとき、いつも口にしているのが次の言葉です。

「そんなことでは、いつまで経っても僕を抜けないぞ。出藍の誉れで、僕を抜いてもらわないかんのに」

最近は叱り下手、叱られ下手が増えたと北尾氏は言う。

いまの中間管理職を見ていると、部下とのコミュニケーションの量が減っていると思います。叱ることもせず、一緒に酒を飲みにいくでもなく、単にじーっと見ていて人事考課だけは低くつける。そういう上司は、愛情が一かけらもないと断じていいでしょう。

本来なら課長クラスこそ、部下の指導をしなければいけない。たしかに上層部と部下との板ばさみになって、大変な立場です。しかし、だからこそ鍛えられるときだと考えるべきです。

積極的に下の連中と食事にいき、自分自身の反省点や部下の教育で欠けていたところを認識する。あるいは会社に対する若手の意識を収集する。そういうことが必要です。

そして部下の悩みを親身になって聞いてやる。たとえば僕が野村証券の事業法人部長だったころ、「どうしてもお客さんに食い込めないんです」と相談されることがよくありました。そういうときは、僕自身が徹底して営業に同行し、応援したものです。

逆に部下たちは板ばさみの大変さを見ています。役員からは怒られたけれど、大勢の部下が一生懸命ついてきてくれるじゃないか。それを知って、よし、もういっぺん頑張ろうという気持ちになれたらいい。昔から、部下の支えがなくて上にいった人はいませんよ。部下をきちんと褒め、そして叱る。そういった気概のあるきちんとした上司がいない組織はダメになります。

(プレジデント編集部 面澤淳市=構成・文 大沢尚芳=撮影)
関連記事
見違えるように働き出す叱り方の極意
打たれ弱い部下にどう接するか
「心理学&行動科学」お荷物社員をスピード改造する法【1】
1000人調査「ここが逆効果!あなたのムチの入れ方」【1】
指示に「脊髄」で反応しているうちはダメ!