部下を褒め、叱れない組織は崩壊する

「しょうがないな。これはみんながやる間違いなんだ。僕も昔、やったことがあるよ」

これも「一言」のバリエーションです。実際にそのとおりの失敗をしていなくても構いません。こういった言葉を付け加えることで、相手の受け取り方が違ってくるのです。

一方で、相手の心情を考えれば「大勢の前で叱ってはいけない」というセオリーがあります。これは、間違いだと思います。

問題が起こったときは、即時、公開の場で叱らなくてはいけません。ただし、そのときには失策を犯した当人(ヒト)ではなく、失策そのもの(コト)を叱るというスタンスが必要です。

「彼がやったミスはありがちなことだから、みんなも気をつけるように」

こう一言付け加えることで「ヒトではなくコトを叱っているんだな」ということがわかります。

大事なのは、その場の全員が失敗の情報を共有するということです。だからこそあえて公開の場で叱るのです。反対に密室へ呼び出したりすると、コトではなくヒトを叱っているような印象を与えてしまい逆効果です。

では北尾氏は、どのような場面で雷を落とすのか。

たとえば部下たちの姿勢に対して叱ります。最近は、こんなことがありました。

奥村綱雄さんが野村証券社長だったころに打ち出したのが「ダイヤモンド経営」です。さまざまな人材が多面的に集まり、輝きを増していくという意味でした。僕はある会議の場で、このことを引き合いに出して、SBIグループの今後3カ年の方針を打ち出しましたが、これはその翌日のことです。

「きのう僕は奥村さんのダイヤモンド経営に触れ、ダイヤを美しく輝かせるブリリアントカットについても言及した。これについて誰かインターネットで調べた者はいるか?」

すると、出席者は15人いたのに誰ひとり手を挙げません。それを知って僕は叱りました。

「自分の知らないことを上司が会議の場で口にした。ということは、それなりの意味があるはずだ。僕があなたたちなら、すぐに調べる。それをしなかったのはけしからん。君たちには知識欲、好奇心がないのか!」