5歳児健診が必要な理由

さて、1カ月児健診は、これまでもほとんどの人が自費で受けているはずです。主に小児科医(医療機関によっては産婦人科医や内科医)が健診を行います。呼吸循環機能や神経発達のどこかに問題があると、充分に哺乳できず成長が阻害されるため、まずは体重を確認します。それ以外にも筋肉の緊張程度、姿勢などから健康状態を把握するなどします。

一方、今現在、5歳児健診は多くの人が受けていません。5歳児健診では、病気の早期発見のためのスクリーニングが目的の一つなのはもちろん、さまざまな点を診ます。①身体発育状況、②栄養状態、③精神発達の状況、④言語障害の有無、⑤育児上問題となる事項(生活習慣の自立、社会性の発達、しつけ、食事、事故等)、⑥その他の疾病及び異常の有無、といった項目です。

幼児期において5歳は、言語の理解能力や社会性が高まり、発達障害を見つけやすい時期でもあります。こども家庭庁は、「保健、医療、福祉による対応の有無が、その後の成長・発達に影響を及ぼす時期である5歳時に対して健康診査を行い、こどもの特性を早期に発見し、特性に合わせた適切な支援を行うとともに、生活習慣、その他育児に関する指導を行い、もって幼児の健康の保持及び増進を図ることを目的とする」としています。

就学前に発達障害の発見を

これまで日本では、1歳6カ月児健診において発達上の問題を早期発見しようとしてきました。実際、知的障害を伴う発達障害、典型的な自閉症の多くが見つかっています。1990年前後に生まれた子どもたちに対する1歳6カ月児健診で、自閉症は感度81%、発達障害の特異度100%という精度が報告されています(本田秀夫「発達障害の子どもを早期発見・早期支援することの意義」精神科治療学24巻8号)。感度とは病気を見つけ出すことのできる割合、特異度とは病気でない人を病気でないと判別できる割合です。

しかし、発達障害が軽度だったり、知的障害がなかったりすると、幼い子の特性はわかりづらいものです。5歳頃になって次第に特性が明らかになってくることもあります。急に周囲の子との違いがはっきりしてきて本人が違和感を持ったり、問題行動をとってしまったりすることもあるかもしれません。それによって孤立したり、登園・登校をしたがらなくなったり、いじめにあったりといった二次的な問題が起こることもありますから、早めの対策が大切です。

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従来のやり方では、3歳児健診の後は、小学校入学の直前に行う「就学前健診」しか機会がありません。それより前の5歳児健診で発達の問題が見つかれば、就学前に支援や指導ができ、子ども本人や保護者、周囲が困ることを減らせるでしょう。今後は市区町村が主体となって、この時期の身体発育状況、栄養状態などに加えて、発達や育児の相談等を受けられるようになります。地域全体で、子どもと保護者をフォローアップする体制ができるのです。