――そういうお話を伺うと、どうしてもネガティブな気分になってしまうが?

いやむしろこの時代こそ、自分を鍛えるチャンスだと思ってください。西洋には“荒波だけが優秀な船乗りを育てる”ということわざがあります。また、高校野球や高校サッカーなどは勝ち残っていくチームの選手はどんどん成長します。激戦のなかを生き延びていくほど、人は成長する。ギリギリの勝負をするためには、自分の全身全霊をかけて戦わなければなりません。例えそこで力尽きても、『自分の力で戦ってきたという実力』が身につくのです。

ところが、戦わないですまそうとする人は、停滞するどころか、落ちるところまで落ちていく。いざというとき、戦う自信と気力が養われていないから、踏ん張ることができないのです。

――では最後に、この時代を生き抜くために1人ひとりが持たなければならない一番大事なメンタリティは何か?

“ひと花咲かせてやろう”という欲を持つこと。今の地位にしがみつこうとする依存心を捨て去ること。そして前向きな成功のイメージを持って、人生を切り開いていく――そんな気概を持った人が大きく伸びていくでしょう。減点主義で差をつけた時代は終わりました。これからは何が何でも、利益やシェアを奪い取ってくる社員が勝ち組かもしれません。あなたは日本で2番目に高い山を知っていますか。これは山梨県の南アルプスにある『北岳』で標高は3193メートル。かなり高い山ですが、みな、一番高い富士山しか知らないのです。若い現役の皆様には、この不況の波を上手に乗り越えて、一番を目指していただきたいと思います。

会社力研究所代表 長谷川和廣(はせがわ・かずひろ)
1939年、千葉県生まれ。中央大学卒。十條キンバリー、ゼネラルフーズ、ジョンソン等でマーケティングを担当。その後、ケロッグジャパン、バイエルジャパン、バリラックスジャパンなどで社長を歴任。2000年ニコン・エシロールの代表取締役就任。50億円の赤字を抱えていた同社を1年目で営業利益黒字。2年目で無借金経営に変貌させた経営手腕が高く評価される。
(取材・構成=宇野 晃 撮影=鷹尾 茂)
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