負のスパイラルに陥らないための「ケア活」
ある日突然、親の介護が始まったAさんのトホホなケースを見てきましたが、親の介護問題は、ケアを担う子どものキャリアや家族関係、その老後にまで影響を与える重大なライフイベントです。
Aさんのように行き当たりばったりの対応を繰り返していると、自分の殻の中で負のスパイラルにはまり込んでしまいます。就活や保活、婚活などと同じように、自分自身のライフプランやキャリア戦略を考えるうえでも、できるだけ早い段階から「ケア活」に取り組む必要があります。
多くのビジネスケアラーにとって、自分が経験するまで介護は未知の世界で、介護保険の存在は知っているものの、どうやったらサービスが受けられるのか、そもそもどんなサービスがあるのかすら知らない人は多いものです。まずは介護保険領域の基本的知識を得ることがケア活の第1歩です。冒頭で「利用者が圧倒的に少数」と述べた介護休業等の制度を知るところから始めましょう。
休みたい場合は介護休暇と介護休業がある
介護休業には介護休暇制度と介護休業制度があります。いずれも育児介護休業法(※3)に基づく制度で、労働者が要介護状態にある対象家族をケアする際に利用できます。
要介護状態とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。対象家族とは、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。
介護休暇を取得できる期間は、対象家族1人につき年5日、2人以上で年10日です。1日単位だけではなく、時間単位で取得することもできます。企業側に給与の支払義務はありませんが、独自に有給にしている企業もありますので、勤務先に確認をしてください。
一方、介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、最大3回まで分割して取得できます。雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合、介護休業期間中に休業開始時賃金日額の67%相当額の介護休業給付金が支給されます。
平均介護期間は61.1カ月と、5年を超えていますから(※4)、いずれの制度も自らが直接ケアをするための休業というより、ケアする側もされる側も、できるだけ無理をせず、日常生活を維持するための体制づくりに充てる期間と考えたほうがよいでしょう。介護期間が10年以上にわたることも珍しくありません。1人でなんとかできるほど甘いものではありません。
※3 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
※4 2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」