加齢とともに、体は早寝早起きに変化する

睡眠に関係するもう1つのメカニズム「体内時計」の周期は、ぴったり24時間ではありません。それよりも10分程度長いのがふつうです。

そのため、太陽の光を浴びることなどで微調整しながら、毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きるという24時間の生活パターンをつくっています。

この体内時計の周期は、加齢とともに少しずつ短くなります。そのため、若い頃よりは早寝早起きのパターンになりやすいのです。

さらに前述したとおり必要な睡眠時間が短くなるので、朝起きる時間がますます早くなり、寝起きの時間が徐々に前倒しになります。

また、加齢により、体内時計がつくり出す昼夜のメリハリも減少するため、眠りは浅く、途中で目が覚めやすくなるとともに、昼間に眠気が起きやすくなります。

しかし、長年の生活パターンは簡単には変えられません。「自然と眠くなる時刻」がきても就寝しないでいると、夜にかえって眠れなくなってしまうのです。

体の変化より急激な生活スタイルの変化

すでにおわかりのように、60代以後の方が訴える「眠れない」「夜、目が覚めてしまう」などの睡眠の悩みは、多くの場合、自然な体の変化の1つと考えられます。

加齢とともに現れる「必要な睡眠時間が減ってきた」「体内時計のメリハリが小さくなった」などの変化にうまく対応できていないだけなのです。

これらの体の変化は、気づかないうちに少しずつ進んでいます。

しかし一方で、生活パターンの変化は急激です。定年を迎えた翌日から、通勤電車に乗る必要もなければ残業もない。会社の仲間と飲みにいくこともなくなり、外出の機会も少なくなります。

こうした生活パターンの変化と体の変化をうまく調整できずに、「眠りたいのに眠れない」と悩んでしまう方がとても多いのです。

また、いまの高齢世代の女性の場合は、子育てが終わった、夫の世話に手がかからなくなったなど、もう少し早いタイミングで出てくることがあります。