年を重ねて睡眠時間が変わったら、どう対応すればいいか。医師の栗山健一さんは「60代以後の方が訴える『眠れない』『夜、目が覚めてしまう』などの睡眠の悩みは、多くの場合、自然な体の変化の1つだ。必要以上に眠ろうとすると、かえって健康を害する結果になる。睡眠とは、昼間活動するために、体が要求するだけ心身を休めるための受動行動であり、『必要悪』だと捉え直すといい」という――。
※本稿は、栗山健一『60歳からの新しい睡眠習慣 「眠れない」ことへの過剰な不安を解消』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
夕方~早晩に眠気が出るが、それを我慢するとうまく寝つけない
誰にでも訪れる「加齢」。年をとるとともに、さまざまな体の不調を感じる人が増えてくるのはいたし方ないことです。「睡眠の悩み」もその1つ。
夜、布団に入ってもなかなか寝つけない。夜中に何度も目が覚めてしまう。朝、早くに目が覚めてしまう。こうした悩みを訴える方は、高齢になるほど多くなります。
もちろん、睡眠の悩みは若い人にもよくあること。しかし、若い頃の「眠れない」と60代以後の「眠れない」とでは、性質が異なります。
若い人の場合、夜、寝ようとしてもなかなか寝つけない原因に、うつ病、不安症などの精神疾患が潜んでいることが多々あります。精神疾患が軽症の場合、多くは寝つきの悪化と同時に、「朝、起きられない」という症状をともないます。
しかし、60代以後の場合、夕方~早晩に眠気が出ますが、それを我慢していざ夜、寝ようとするとうまく寝つけず、朝は「早く目が覚めてしまう」ということが多いのです。じつは、これには疾患とはいえない別の原因が潜んでいる場合があります。