なぜ人は眠くなるのか? 睡眠時間を決める2つの機能
そもそも人はなぜ眠るのでしょうか? 1つは、疲れをとるためです。身体や脳の活動によって生じた疲れを解消し、つねに一定の状態に保とうとする機能が、人間や動物には備わっています。
これを「恒常性維持」といい、昼間たくさん歩いた日、きつい仕事をした日は、自然とぐっすり眠れるわけです。
しかし、とくに疲れを感じていなくても、人や動物はある程度眠れるようにできています。これは、睡眠をつかさどるもう1つの機能、「体内時計」が働いているからです。
体内時計は、生体リズムとも呼ばれ、1日の生活パターンに合わせて、自律神経活動やホルモン分泌などの生体調整機能を適正化する役割を担っています。毎日夜になると自然と眠くなるのは、この体内時計の働きも関わっています。
恒常性維持と体内時計(生体リズム)、この2つのメカニズムが、眠る→起きて活動する→また眠る、という生活パターンをつくり出しています。そして、加齢とともに現れる睡眠の悩みにも、大きく関係しているのです。
60歳を過ぎたら必要な睡眠時間が減っていく理由
60代以後の睡眠の悩みには、前述した2つのメカニズムの加齢性変化が関わっています。
まず、「恒常性維持」。年をとると、人は昔のようには動けなくなります。活動量が落ち、基礎代謝量も落ちていきます。また、定年退職や子育てが一段落することで生活パターンもがらりと変化します。
毎日、通勤電車に揺られていた生活から、いわゆる“悠々自適”の生活へ、という方もいます。
生活の負荷が減り、活動量が減ることにともなって必要な睡眠量も少なくなります。つまり、若いときほど長く睡眠時間を確保しなくても大丈夫なのです。
実際に眠っている時間(体が必要とする睡眠時間)を脳波計で調べた調査では、睡眠時間は年齢とともに減少し、25歳では平均約7時間でしたが、45歳で約6.5時間、65歳では6時間を下回る結果になっています。
つまり、年をとると「眠れない」のではなく「眠る必要性が少なくなっている」のです。