昇格の唯一の条件がTOEICスコア
住友商事人事部で人材開発チーム室長を務める西條浩史氏は「英語を社内公用語化しようという話は出ていない。いままでどおり、外国人社員や現地とのやりとりは英語。日本人同士なら日本語を使うでしょうね」と話す。
同社では入社5年目の昇進(主任相当職)時に600点、11年目の昇進(係長相当職)に730点の取得を義務付けている。
「入社して4年間は、全員が基幹職(総合職)C級。5年目に同B級に上がることができる。次の6年間が同B級で、その後基幹職A級に進むが、C級からB級、B級からA級に昇格するためにそれぞれ1つだけ条件がある。前者はTOEIC600点を取ること。後者は730点を取ることです」
社内検定としてTOEICを導入したのは1989年だが、730点が要件となったのは06年。スコア制定に踏み切ったのは、「若い人にははっきり提示したほうがいい」と判断したためという。
基幹職C級の同社社員は、「実はまだ600点を取れていない」と話す。「英語は入社後に伸ばせる能力だから」と言われ、採用時も特に重視されてはいない。
ただ、西條氏によれば「ほとんどの人が求められるスコアをクリアしており、英語のせいで昇格できない社員はゼロに近い」。
点数は公表していないが、三井物産もTOEICスコアを昇格の要件に定めていると回答している。12年度向け採用サイトには、「入社後3年間でTOEIC730点以上のスコアを達成してください」と明記されている。
同社広報部は「3年ということはなく、なるべく早く取得するようにいっています。600点では現地法人のスタッフや国内の外国人社員との意思疎通が厳しい。ビジネスで使いこなすには800点が標準レベルになるのでは」という。
「TOEIC等英語テストの結果を社内で活用している」と答えた企業のうち、会社が全額または一部受験費用を負担するとしているのは85%近くに達する。団体特別受験制度を活用して「社内でTOEICが受験できる」企業も80%近い。たとえば住友商事では年3回IPテストが受けられ、費用はすべて会社負担。三井物産では年8回、IPテストが受けられる(ただし個人が3000円を負担)。