※本稿は戸堂康之『なぜ「よそ者」とつながることが最強なのか』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
金融危機、震災、洪水、パンデミック
グローバル化によって経済的な悪影響が世界に波及した一つの例は、リーマン・ショックに端を発する世界金融危機の世界的な拡大です。
2008年に世界的な大手投資会社リーマン・ブラザーズ社が経営破綻したことで、リーマン社の債権を保有していたアメリカ国内外の金融機関が資金繰りに行き詰まると、その影響は瞬く間に世界各国の金融機関に波及しました。
さらに、金融機関が資金不足に陥ったことで、世界の多くの国で景気が後退しました。なかには震源のアメリカよりも大きな割合で一人当たりGDPが縮小した国もありました。
経済ショックは、金融ネットワークだけではなく、サプライチェーンを通じても波及します。そのことは、東日本大震災後に世界が実感することになりました。震災前の東北地方は、自動車や電機電子産業のサプライヤー企業が多く立地していました。
これらの工場が震災で破壊されたため、被災地からの部材の供給がストップしてしまいました。その結果、震災の被害を直接受けなかった地域でも、部材不足から生産を停止したり減産したりせざるを得ない企業が多く出たのです。
震災前の2011年2月から震災直後の3月にかけて、東北地方の工業生産は3割以上も急減しましたが、同時に全国の工業生産も15%程度減少したのです(図表1)。さらに、その影響は海外にもおよび、アメリカのゼネラル・モーターズ、フォード・モーター、トヨタ自動車、ホンダ技研、韓国のルノーサムスン、タイの日系自動車会社などが減産に追い込まれました。