一流企業が求めている社員とは、どんな人材か。明治大学国際日本学部の小笠原泰教授は「本気でグローバルに戦う日本企業では、日本人社員のライバルは日本人だけではなくなる。これといったスキルがなく『一生懸命働きます』という人材は、変化に取り残される恐れがある」という――。

※本稿は、小笠原泰『日本人3.0 新しい時代のルールと必須知識』(ワニブックス【PLUS】新書)の一部を再編集したものです。

ビジネスバッグを持った若いビジネスウーマン
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

ユニクロの「初任給30万円」が示す未来

円安による輸入インフレ対応という社会的なプレッシャーの中で、皆で一緒(極めて日本的)に仕方なく給与を上げる大企業(円安の恩恵で、業績が上振れしているだけで、企業の競争力が強くなったわけではないので、経営陣は、この賃上げは本心では歓迎ではないと思います)が増えましたが、柳井氏のユニクロ(ファーストリテイリング)の初任給30万円への賃上げは、大きな転換を意味します。

今後、給与差は「業界間の差」から「企業間の差」へと変わり、「その差は拡大していく」と思ったほうがよいでしょう。

加えて、初任給が上がるということは、当然、昇給のカーブは緩やかになり、評価による個人の間での給与差は大きくなっていくということです。これまでの、申し訳程度の給与差をつけても、基本的には「横並び昇給」というのはなくなるでしょう。

30万円への賃上げは、国内と海外のオペレーションをグローバル化の観点で同じ土俵で見ることにつながるので、円安による海外との給与差の解消になるわけですが、裏を返せば、競争相手も日本人だけではなくなります。

日本人社長は減っていくかもしれない

柳井氏は「真のグローバルプレーヤーになる」「次の10年も3倍以上に成長し売上高10兆円を目指します」と言っているので、企業内において、当然、「日本人だから」ではなく、「日本人でしかない」になるわけです。

日本企業で本気でグローバルに戦う企業はどのようになるのでしょうか。日本人の外圧に弱い体質を考えると社長は外国人になるケースが増える気がします。

カルロス・ゴーン氏のケースをみればわかりますが、日本人の社長の場合、反対が強くて思い切った改革は難しいのですが、外国人の社長なら「仕方ないか」でできてしまいます。それがいまの日本です。

有名なところでは、武田薬品工業のウェバー氏、三菱ケミカルグループのギルソン氏(石油化学事業を分離する再編が進まず、退任)、オリンパスのカウフマン氏がいます。

どの企業も、グローバルの視点での生き残り戦略を真剣に考え、大きな意思決定をしないといけない企業です。そもそも、残念ながら海外経験が乏しく、英語も堪能でない日本人の経営者では無理な相談かもしれません。文系の日本人社長に戻した三菱ケミカルの今後に注目してください。