日本企業に就職したはずが、海外企業の社員に

また企業をグローバル化に適応させていく過程で、コアではない日本のビジネスを整理していく企業が増えるのではないでしょうか。

武田薬品工業はアリナミンやベンザなどの大衆薬(処方箋のいらない医薬品)を扱う子会社の武田コンシューマーヘルスケアを、資生堂はTSUBAKIや専科などのパーソナルケア(日用品)事業を、オリンパスも祖業である工業用顕微鏡などを手がける科学事業を、それぞれ海外ファンドに売却しています。

赤字ではないですが、伸びしろがなく戦略的なコア事業ではないので、売却したわけです。この流れは、おそらく加速するでしょう。

事業譲渡なので、従業員も移動するため、就職した企業の社員ではなくなります。海外ファンドに売却されるので、ちゃんと利益を出せる体質にしていくでしょうから、給与は上がるかもしれませんが、働く環境は厳しくなるでしょう。

“野武士集団”から脱皮した日立製作所

自ら殻を破って前に踏み出す大企業も出てきました。

たとえば日立製作所を見てみましょう。いまは見る影もないですが“お公家集団”東芝とよく比較され、かつては“野武士集団”と称された組織です。「技術の日立」というフレーズが象徴するように、東大出の技師が主軸のお堅いイメージがありました。

旧日立本社ビル
旧日立本社ビル(画像=Fg2/PD-self/Wikimedia Commons

しかしそんな日立製作所も、リーマン・ショックの影響で記録的な赤字を出し、経営再建が急務となり、グループ会社から復帰した故中西元社長とその後継者のもとで大胆な事業構造転換に踏み切っています。

具体的には、経営の軸と位置づけるIT事業と社会インフラ事業との相乗効果(「Lumada」がキャッチフレーズ)を基準とし、日立金属、日立化成、日立物流などグループの伝統ある事業(子会社)を売却し、イタリアの鉄道関連企業であるAnsaldo Breda S.p.A.とAnsaldo STS S.p.A.を買収し、鉄道事業のグローバル展開を積極的に行いました。鉄道ビジネスユニットのグローバル本部はロンドンにあります。当然、トップは日本人ではありません。

このようにして、日立製作所は、FNH(富士通、NEC、日立)の一角から、グローバルで戦う企業への道に大きく踏み出しています。

グローバル本部といえば、ユニクロのファーストリテイリングも2022年に東京本部に加え、ニューヨークにも「世界本部(グローバルヘッドクオーター/GHQ)」を立ち上げています。