TOEICスコアを「いまは昇進の条件にしていないが、今後はする」と回答した企業を含めると、4社に1社だ。

そのひとつがコニカミノルタホールディングスである。同社は11年4月からTOEICスコアを昇格の要件にするという。役員が730点、課長が600点だ。730点は「どんな状況でも適切なコミュニケーションができる素地を備えている」、600点は「日常生活のニーズを充足し、限定された範囲内では業務上のコミュニケーションができる」レベル(国際ビジネスコミュニケーション協会による)である。

同社の広報ブランド推進部は「海外生産拠点における現地のスタッフとのやりとりのツールとして英語が必要。600点は最低の目安で、役員により高いスコアを求めるのは、進出先の文化や国民性も理解してマネジメントができることが不可欠だから」という。

2001年、他社に先駆けてTOEICスコア取得を昇進の条件にすると発表し、グローバル化への対応を印象付けたのは日本IBMである。それから10年、社内の状況に変化はあるのだろうか。同社の人事ワークフォースで研修を担当するシニア・マネージャーの塚本亜紀氏は次のように話す。

「当社はグローバルカンパニーなので、01年以前も一定のポジションになれば英語力は不可欠だった。つまり『偉くなったら必要』だったが、それが01年に『偉くなるには必要』と変わった。さらに08年にはグローバル規模での組織変更にともなって各国スタッフとの接触が急増し、英語は『偉くなくても必要』になっている」

同社では、課長職相当への昇格および短期海外出張にはTOEIC600点、次長職相当・長期出張や海外赴任で730点と定めている。課長クラスになると、海外との電話会議やウエブによる会議が週1回以上入るという。一般社員でもEメールやチャットで英語を使うことが増えた。

01年以降、スコアの評価基準を上げてはいないが、役員などに登用される際にはグローバルリーダーとの面接がある。自分自身のキャリアや能力を、もちろん英語でアピールする必要がある。スコアは前提にすぎず、そのうえでの実務能力が問われているのだ。

同じように、活動拠点が世界各国にあるトレンドマイクロでは、役員800点、部長730点、課長600点というスコアを示している。同社人事部の成田均部長代行は、「スコアはあくまでも目安。当社ではプロジェクトを組成する際、チームメンバーは各国からの選抜で決める。情報を交換するために英語を社内公用語と位置付けている」という。創業者が台湾人ということもあり、アジア出身のメンバーも多い同社では、「ブロークンイングリッシュが社内公用語」(成田氏)とのことだ。