日本が対米交渉の「列の先頭」にいる

ドナルド・トランプ米大統領に世界経済が振り回され続けている。4月9日、米政権が「相互関税」のうち第2弾として13時間余前に発動した60か国・地域(中国を除く)への関税率の上乗せ分を90日間停止すると発表した。日本に対しては、4月5日に第1弾として適用された10%の相互関税が維持され、3日に課された鉄鋼や自動車に対する25%の追加関税も残ることになる。

衆院予算委員会で、石破茂首相(手前)の答弁を聞く赤沢亮正経済再生担当相=2025年4月14日、国会内
写真=時事通信フォト
衆院予算委員会で、石破茂首相(手前)の答弁を聞く赤沢亮正経済再生担当相=2025年4月14日、国会内

米政権は各国との関税交渉のためと説明したが、4月2日(米時間)の相互関税発表以来、米株・米国債・米ドルのトリプル安となり、特に米国債が売られ、長期金利が上昇するなど金融危機の恐れが出てきたことを軽視できなくなったためだとの指摘もある。

日米間では、4月7日の日米首脳電話会談で、石破茂首相がトランプ大統領に関税措置の見直しを求め、担当閣僚を置いて協議することが決まった。日本は首相側近の赤沢亮正経済再生相、米国はスコット・ベッセント財務長官とジェミソン・グリア通商代表部(USTR)代表が担当に充てられた。

政府は泥縄ながら、11日に総合対策本部の下に、林芳正官房長官と赤沢氏を共同議長とし、外務省や経済産業省など関係省庁で構成するタスクフォース(作業部会)を設置した。

日本が対米交渉の「列の先頭」(ベッセント氏)にいるのは、米国にとって早期に成果を出すうえで、与しやすかったのだろう。安全保障で米国の「核の傘」に頼っている日本は、報復関税などの対抗措置を取り得ず、関税減免などの特別扱いに見合うディール(交渉)の材料も持ち合わせていないからだ。

その日米関税交渉の初回は4月17日(米時間16日)、赤沢氏が訪米して行われた。トランプ氏が意表を突いて会談に登場した後、ベッセント氏らとの閣僚協議で、米国の貿易赤字解消に向け、自動車や農産物の市場開放などについて早期合意を目指すことを確認した。トランプ政権のペースである。安全保障も交渉の議題となり、トランプ氏は、在日米軍駐留経費の日本側負担が少なすぎる、と不満を述べたという。

相互関税の上乗せが停止している90日間で日米交渉がどこまで進展するかは見通せないが、楽観を許さないことは間違いない。