「右顧左眄」「平身低頭」「周章狼狽」

少数与党で内閣支持率が低迷していては、政府・与党の政治判断や政策遂行に当たって「右顧左眄」し、野党対策では予算や法案成立のために「平身低頭」するしかない。そこへ米国による高関税措置という「国難」に襲われれば、「周章狼狽」するしかないではないか。

石破茂政権は3月31日、参院で再修正した2025年度予算案を可決し、衆院に戻して全会一致の同意を得て、年度内成立を実現させた。参院での予算審議の間、首相が配布した10万円商品券の問題や、自民、公明両党首会談で物価高対策をぶち上げたフライングによって与野党内で批判されたが、立憲民主党などの石破政権「延命」作戦もあって、何とか低姿勢で乗り切ったといえる。

自民党本部を出る石破茂首相=2025年4月3日午後、東京・永田町
写真=時事通信フォト
自民党本部を出る石破茂首相=2025年4月3日午後、東京・永田町

石破首相は、戦後80年談話の閣議決定による発出を見送るものの、戦争を検証する有識者会議を設置し、その成果を自身の見解とともに公表する。読売新聞が3月27日に報道した。首相に歴史を総括する見識が備わっているのかを問う以前に、新たな検証作業が自民党内や世論の分断を招き、政権の体力がさらに奪われるリスクを否定できない。

企業・団体献金の規制強化をめぐる与野党協議では、自民党と公明、国民民主両党が相互に歩み寄った。3党は3月31日の実務者協議で、企業・団体献金の存続を前提に情報公開の強化などで合意した。公開規定では、年間1000万円超の寄付をした企業や労働組合の名称や総額を公開すると主張していた自民党が、年間5万円超に大幅に引き下げるという公国案を受け入れた。

石破首相は、6月に東京都議選、7月に参院選を控え、トランプ米大統領による「相互関税」などへの対応策とともに、自民、公明両党が勝利するための政治目標や外交・安全保障、経済政策を掲げることができるのか。

「解明なくして支持率は上がらない」

25年度予算は3月31日、参院本会議で自民、公明、日本維新の会3党などの賛成多数で修正可決された後、衆院本会議に回付され、全会一致の同意を得て成立した。

衆院の審議では予算に賛成した維新が求めた教育無償化などで3党が合意して修正され、参院審議では立憲民主党などが主張した高額療養費制度の負担上限額の引き上げ見送りを受けて再修正・提出されたものだ。参院で修正された予算案が衆院に回付され、同意を得て成立するのは、現憲法下で初めてである。