「消費減税でなくとも低所得者支援はできる」ことに気付いた

以来立憲は、消費減税について以前にも増して慎重な姿勢をとっている。立憲は11月に発表した新しい経済政策で、物価を上回る3%の名目賃金上昇率の実現や教育無償化の推進、中小・零細企業への公的助成による「最低賃金1500円」の実現、非正規雇用の処遇格差是正、再生可能エネルギー産業への大規模投資などを打ち出したが、消費税については「現行の軽減税率制度を廃止し、給付付き税額控除を導入する」と記述するにとどめた。

消費税が持つ「逆進性の高さ」について、減税そのものではなく、税率を下げずに富裕層から多額の消費税を徴収した上、低所得者に減税分を還付する形で対応する、という内容だ。

「消費減税をしなくても(しないほうが)低所得者への負担軽減はできる」ことを示したと言える。

2つの「負のパワーワード」を無効化した

今回の共通政策について、市民連合はこうした立憲の姿勢に配慮したのだろう。消費減税にこだわっていては、野党はまとまれない。低所得者にしっかり目配りする政策があれば、その方法はあえて問うべきではないと。

その結果、共通政策には消費減税の代わりに「逆進性の強い税制の是正と社会保険料負担の適正化」という文言が盛り込まれた。消費減税でも給付付き税額控除でも「乗れる」文言だ。実際、この文言に各党が「乗った」。今後、消費減税を激烈に主張する政党が、市民連合の共通政策をタテにして立憲に「消費減税」を求めて揺さぶりをかけることは、極めて難しくなる。

政治状況を読んで立憲主軸の「大きな構え」構築を重視し、共通政策を地味にアップデートさせた市民連合に、筆者は前回衆院選以降の成長をみる。高く評価したい。

市民連合の共通政策によって、立憲はまず、前回衆院選でも「共闘」できた比較的近い野党(俗に「立憲野党」などと呼ばれる政党群)との間で、ともに闘う「構え」を作ることに成功した。

立憲と共産の間に亀裂を生むのに有効に作用した「立憲共産党」、立憲と主にれいわとの間にくさびを打ち込んできた「消費減税」という、野党陣営にとって「負のパワーワード」となっていた二つの言葉は、これによって相当程度無効化した。外野がいくら「立憲共産党」や「消費減税」と騒いで野党を「多弱」のまま固定しようとしても、当事者たちはそんな喧騒に構わず、連携を強めることができたのだ。