仕事の立場上欠席が困難な飲み会は「労働時間」
●飲み会が「労働時間」と認められたケース
逆に、飲み会が「労働時間」と認められたケースが、富士通事件です。
くも膜下出血で死亡した女性の遺族が女性の死は労災であるとして遺族補償一時金及び葬祭料の支給を求めた裁判です(高松高判令2・4・9)。
女性のくも膜下出血の原因が業務にあったのかを判断するにあたり、残業時間が問題になりました。その中で女性が参加していた飲み会が労働時間としてカウントされるか否かが争点となり、最終的に一部の飲み会が労働時間として認められました。
判決では、リーダーの立場だった女性が飲み会を欠席することが事実上困難であったことから、慰労や懇親の趣旨が含まれる飲み会であったとしても、業務の円滑な遂行上必要であったと認められ、労働時間として認めるのが相当である旨が記されました。
この判例で飲み会の時間=労働時間となった理由は以下の3点です。
・直接の上司が主催者であり部門所属の従業員のほとんどが参加していた
・リーダー職という立場上、欠席することが事実上困難だった
・業務の円滑な遂行上必要であった
会社や上司が主催者の飲み会は、仕事との関連性が高く断ることが困難だと判断されやすく労働時間として認められる可能性が高くなります。
新入社員歓迎会は新人にとって「業務の延長」
●「飲み会は業務の延長」セクハラ事件で会社にも責任
2次会が「仕事と密接な関係があった」と認められた事例もあります。
自動車販売会社で働いていた派遣社員の女性が新入社員歓迎会の2次会で男性社員からセクハラを受けたとして会社と男性に損害賠償を求めた裁判です(福岡地判平27・12・22)。
新入社員歓迎会の2次会で女性がカラオケを歌っていると、男性社員が女性を抱えて持ち上げ、同僚の前でスカートがずり上がってしまいました。女性は男性社員からセクハラを受けたとして会社と男性を訴え、裁判所は会社と上司に約33万円の支払いを命じました。
歓迎会は就業時間外に行われたものでしたが、下記の理由から女性は参加せざるを得ない状況だったということで「会社の業務の延長」だと判断されました。
・入社したばかりだったこと
・上司が女性社員を誘ったこと
・自分の歓迎会だったこと
飲み会が労働時間として認められると、残業代の支払いが発生するだけでなく参加者同士のけんかや事故などの労災認定がされる場合もあります。また、前述したようなセクハラの損害賠償責任も会社が使用者として責任を負うことになります。