勤務時間中のタバコ休憩に法的な問題はないのか。社会保険労務士の桐生由紀さんは「法律に明記されているわけではないが、すぐ仕事に対応できる状態でのタバコ休憩であれば、労働時間として認められている。ただし、非喫煙者が不公平感を抱かないようなルールは作ったほうがいい」という――。
喫煙エリアの外観とマーク
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです

社員同士のいざこざの火種になりやすい「タバコ休憩」

「それって休憩じゃないの?」

仕事中に頻繁にタバコ休憩をとる社員を見て不公平だと感じたことはありませんか?

実際、タバコ休憩を頻繁にとっている人がいると、非喫煙者からすれば「自分達はお昼休憩しかないのにずるい」「1日に何回も行っているのに給料が払われているのは納得がいかない」と不満の対象になるのも無理はありません。

一方で喫煙者からすると「タバコ休憩はトイレ休憩と一緒だ」「喫煙所でのコミュニケーションが仕事に役立っている」という考えもあるでしょう。

このように、タバコ休憩に関する社員同士の対立や不満は経営者にとっても「あるある」です。

今回は、雇用の専門家である社労士の立場から、タバコ休憩ついて法的な論点から考えたいと思います。

タバコ休憩は法律ではなく慣習として許容されている

タバコ休憩が給与ドロボーだと不平不満のネタになるのは、業務時間中に抜け出してタバコを吸うからであり、その間仕事をしていないにもかかわらず賃金が支払われている状況だからです。

「なぜタバコ休憩だけが許されているのか」疑問に思ったことはありませんか?

タバコ休憩は法律ではどのように定められているのでしょうか。

実は、労働基準法においてタバコ休憩については明確な定義はありません。そのため、明確なルールが存在している会社は多くありません。タバコ休憩は法律で認められている休憩ではなく、慣習として許容されているケースが多いのが実情なのです。

このタバコ休憩の問題を考える時、以下の3つの論点を理解する必要があります。

① 休憩時間と労働時間の違い
② 職務専念義務
③ ノーワークノーペイの原則