建前だけの自由参加は「強制参加=労働」とみなされる
参加を強制された忘年会は労働時間として認められる可能性が高くなります。
ただ、表向きは「自由参加」と言いながら、現実的には断ることが不可能な場合も多いですよね。
強制参加には「必ず参加してください」と命令する以外にも、形式的には自由参加の体裁をとっておきながら、不参加の人を不利に扱うような間接的な強制もあります。
表向きは「自由参加」と言われていても
・参加しないと叱責されるなどのパワハラを受ける
・参加しないと陰口を言われるなど職場に居づらくなる
・参加しないと賞与の査定に影響したり、協調性がない人と評価される
・参加しないと「みんな参加してるんだから」といわれる
・幹事を命じられ欠席できない。
こういった場合は、自由参加としていても「断る自由がない」とみなされ事実上の強制参加にあたります。
間接的な強制と受け取られないように、普段のコミュニケーションで会社から従業員に対して「参加しなければならない」と感じさせる言動や対応をしないように注意が必要です。
ただの「飲み会」は労働時間とは認められにくい
前述したとおり、忘年会が労働時間として認められるためには、忘年会が「指揮命令下に置かれている」=「労働」と判断される必要があります。
ただ、会社の飲み会や私的な飲み会が、労働時間と認められるケースは極めて少ないのが実情です。
飲み会が「労働時間」であるか否かが争点となった判例は複数あります。
●飲み会が「労働時間」と認められなかったケース
飲み会が「労働時間」と認められなかったケースが、東芝エンジニアリング事件です。
出張先で送別会に参加後、川で溺死した男性の遺族が男性の死は労災であるとして遺族補償一時金及び葬祭料の支給を求めた裁判です(東京地判平11・8・9)。
この送別会は同じ職場の従業員が有志で企画したもので参加は自由でした。会費も自己負担で行われました。送別会自体も幹事が開会の挨拶をした後は閉会の挨拶もなく流れ解散で終了しました。
このような開催の経緯や状況からして、送別会の参加は業務ではないと判断され労災は下りませんでした。
この判例で飲み会の時間=労働時間ではないとなった理由は以下の4点です。
・会社が主催ではなく従業員が有志で企画したもの
・参加費用が個人負担
・自由参加であった
・閉会の挨拶等がなく流れ解散
従業員が幹事で会費も自己負担、自由参加、こういった飲み会は労働時間として認められる可能性は極めて低いでしょう。