就業時間後に行われる「会社の忘年会」は法律上どう扱われるのか。社労士の桐生由紀さんは「上司や会社に参加を実質強制されている場合は『業務』として扱われる可能性が高い。『飲み会だから給料は発生しない』というのは違法だ」という――。
「飲み会は仕事ではない」とは言い切れない
「気を使う上司と飲みたくない」「お酌が苦手」「一発芸をやりたくない」
そんな憂鬱な声が聞こえてくる忘年会シーズンの12月。参加したくない人からすると忘年会は過酷な仕事ですよね。
「残業代が出ないなら忘年会には出ません」
一度言ってみたいと心の中で思っている人も多いでしょう。
楽しみにしている社員がいる一方、断れない雰囲気や仕事上の不利益を気にして仕方なく参加している人も多い忘年会。そういう人からすると就業時間後に行われる忘年会は残業代がつかない時間外労働みたいなもの。これでは残業代の有無が気になっても仕方ないですよね。
とはいえ「飲み会は仕事じゃないでしょ?」と思う人も多いでしょう。ただ、実際は強制参加の飲み会が「仕事ではない」とは言い切れないのです。
今回は、雇用の専門家である社労士の立場から、飲み会に関わる残業代の発生条件やその対策ついて法的な論点から考えたいと思います。
忘年会の時間は「労働時間」か
忘年会の残業代を支払わなければならないかどうかは、忘年会の時間が「労働時間」といえるか否かで決まります。
では、労働時間とはどのような時間なのでしょうか?
労働基準法で定められている労働時間は、勤務開始から勤務終了までの時間から休憩時間を差し引いた時間のことで、労働者が会社の「指揮命令下」に置かれている時間です。
指揮命令下とは、ある行為を行うことを会社から義務付けられている状態、または行うことを余儀なくされている状態をさします。
指揮命令下に置かれているか否かの判断ポイントは3つです。
① 会社からの業務命令で行動している
② 業務との関連性や必要性
③ 場所的・時間的拘束
注意したいのは、①の「業務命令」には黙示の命令も含まれるということです。