賃金さえ支払えば強制参加自体は違法ではない

そもそも、忘年会などの行事の参加を会社が強制することはできるのでしょうか。

会社は従業員と労働契約を結んでいます。労働契約では会社は従業員に業務を命じる権利があります。これを「業務命令権」といいます。

●就業時間内に開催される場合は強制参加も可能

忘年会などの社内行事が就業時間内に行われる場合は、会社の業務命令として強制参加させることも可能です。

その場合、飲み会でも仕事として給料も支払われます。「飲み会だから」と参加時間の賃金が控除されたとしたら、それは違法になります。

●就業時間外に開催される場合は残業命令が必要になる

忘年会などの社内行事が就業時間外に行われる場合は、参加するか否かを従業員は自由に決めることができるため、基本的に会社が参加を強制することはできません。

ただし、就業時間外でも「仕事として」行う場合は、会社の残業命令として強制参加させることができます。

残業命令を行うには次の要件を満たさなければなりません。

① 36協定(労使協定)を締結している
② 雇用契約書や就業規則に「残業命令」が記載されている
③ 残業代が支払われている

飲み会自体が、業務上の必要性が全くない場合や必要以上に長時間拘束したり、余興を無理矢理させたりするような場合は、残業として命じることが難しくなりますので注意しましょう。

参加しない人を尊重する姿勢が大切

会社としては、社員への福利厚生やコミュニケーション促進のために忘年会を企画したい気持ちが大きいと思います。

ただ、その忘年会が半ば強制で欠席できず、上司に気を遣い、夜遅くまで武勇伝を聞かされる――。そんな飲み会では「残業代を払ってほしい」と思われても仕方ありません。

飲み会の時間は、仕事こそしていないかもしれませんが、社員は自分のプライベートな時間を会社に提供しています。社員が本来自由に使うことができた大切な時間だという意識をしっかりもって、参加する人が気分よく過ごせるように配慮しましょう。

また、働く人が多様化する中でお酒の力を借りてのコミュニケーションは限界を迎えています。飲みに行くのが苦手な人、プライベートを大切にしたい人、育児や介護で時間に制約がある人など、さまざまな人が働いています。そういった人たちが参加しないことを尊重する姿勢がとても大切です。

社員の慰労や親睦が目的なら、飲み会以外のコミュニケーション方法も考えてみてはどうでしょうか。昔ながらの画一的な飲みニケーションから卒業しましょう。

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