やり直せる社会なんて嘘っぱち

この仕事を始めてそろそろ3年になるが、正直なところ「失敗したなあ」「こんなことだとは思っていなかった」というのが本音だ。

「新しい働き方と言われ、いいかもしれないとやる気になりましたけど、現実には会社に都合のいい働かせ方だと思うんです。雇用契約がないから社会保険に加入しなくていい、健康診断もやらない、退職金も払わない。安く使うための方便だったと気付いたけど後の祭りです。しくじったと思いますね」

増田明利『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)

病気や怪我、事故の場合でも業務委託だから簡単に切られてしまう。やっぱりおかしいと思うのだ。

「辞めたらマンション管理人に戻るか、ハローワークでよく勧められた介護。さもなくば求人倍率が高い警備ぐらいしか行くところがない。それでも今よりはましかなって思うんです」

このままでは早晩、身体を壊すか事故を起こしてしまうかだと思うのだ。

食品会社をリストラされてよく分かったのは、やり直せる社会なんて嘘っぱちだということ。

「1度の失敗やつまずきでおしまい。これが本当のことですよ」

特別な資格や特技のない人間は、ひたすら長時間労働するか賃金の低い仕事に甘んじるしかない。こんな社会に希望があるのかと思う。

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