何も決まっていない事業を「詰めの段階」と発言

今回の謝罪にいたる経過を振り返る。

ことし10月12日の静岡県内商議所会頭らの懇談で、川勝知事は静岡県内で行われている国際文化交流事業「東アジア文化都市」に触れ、「三島を拠点に東アジア文化都市の発展的継承センターのようなものを置きたい。そのために土地を物色している。実際は、国の土地を譲ってもらう詰めの段階に入っている、それも買わないで定期借地で借りたい」などと新規事業を明かした。

県議会を無視した頭越しの知事発言で、土地買収等はじめ新たな施設計画が進んでいることが一部報道で初めて公になった。

自民党県議団らはこの知事発言に激怒、9月県議会最終日の翌13日に急遽、緊急質問が行われた。

質問に立った自民党県議は「(当該発言は)不穏当発言ではないか」とただした。

これに対して、川勝知事は同施設計画について、「職員レベルの内部検討は進んでいるが、何も決まっていないのが実情だ」などと釈明した上で、「不穏当ではない」と頭から否定した。

自民党県議団にそれ以上、追及する材料はなく、この問題を閉会中審査することを決めて、12月県議会に先送りした。

「構想を述べただけ」と発言の訂正を拒否

県議会総務委員会は10月25日に閉会中審査を行い、事務方の説明を求めた。

担当部長は「三島駅近くに国が利用する予定のない国有地の情報をもらったが、譲渡など具体的な検討に至っていなかった」と詳細な資料を基に実際の状況を説明した。さらに、「知事の発言には正直なところ驚いた」と心中を明かした。

事務方の説明通りならば、川勝知事は、まだ決まってもいない頭の中のアイデアを「詰めの段階」として、堂々と外部に話してしまったことになる。

11月6日の2回目の閉会中審査では、県当局の説明に食い違いやごまかしがないかを確認するために、国の関係者を参考人として招請することを決めた。

11月22日の3回目の閉会中審査では、東海財務局の担当者が、国有地取得やその活用方針など全く決まっていない状況を県から説明を受けたことを明らかにした。

筆者撮影
12月1日の県議会冒頭で、「不適切発言」を訂正しないとした川勝知事

3回にわたる丁寧な審査の結果、川勝知事の発言した「三島に東アジア文化都市の発展的継承センター」事業は「詰めの段階」ではなかったと断定された。県議会総務委員長らが11月29日、発言の訂正を申し入れた。

これに対して、川勝知事は「構想を述べただけであり、訂正の必要はない」ときっぱりと拒否した。