静岡県内のリニア中央新幹線着工を巡る最大の問題の一つであった「田代ダム案」が決着を迎えようとしている。ジャーナリストの小林一哉さんは「JR東海は川勝知事の『言い掛かり』ともいえる懸念を全て丁寧に潰した。川勝知事は最後の悪あがきをしているが、じきに大勢が決するだろう」という――。
静岡県だけが反対してきた「田代ダム案」に大きな動き
静岡県のリニア騒動の最大の焦点である田代ダム案が大詰めを迎えた。
川勝平太知事は11月10日の定例会見で、南アルプスリニアトンネル静岡工区工事に伴う水資源保全の解決策として、JR東海が示した田代ダム案の実施策を大井川利水関係協議会に諮ることを渋々ながら、容認した。
大井川利水関係協議会は、静岡県が事務局となり、流域の10市町、11利水団体で構成される。
大井川を占用するリニアトンネル工事に必要な河川法の許可権限を握る県は、大井川下流域の利水に支障があるとして、水資源保全の解決をJR東海に求めてきた。解決には同協議会の合意を必要としている。
その解決策が田代ダム案である。
田代ダム案の実施策が示されたことで、リニア問題解決に道筋がつくことを関係者は十分に承知している。つまり、「大詰めの段階」を迎えたのである。
流域市町などの大筋の了解を得られているが、唯一、反対の姿勢を貫いているのは事務局の静岡県であり、許可権者の川勝知事本人である。
賛成派の流域市町とJRは強い姿勢で臨む
今回の会見で、川勝知事は、これまで通り虚言を駆使し、記者たちが混乱する情報操作を行うだけでなく、いまごろになって「田代ダム案が河川法に違反する疑いがある」とデタラメを繰り返した。
何としても川勝知事は田代ダム案をつぶしたいと、反リニアの姿勢を頑なに崩さないままだ。
だからこそ、知事だけでなく、県庁全体で田代ダム案の実施策にストップを掛けることに躍起である。
JR東海は、一日も早い利水関係協議会の開催を要請しているが、県は重箱の隅を楊枝でほじくるように何か言い掛かりをつけられないか、対抗策をひねり出そうとしている。
しかし、川勝知事の反リニアに徹する姿勢に危機感を抱く流域市町などは強い姿勢で臨んでいる。
田代ダム案を巡る攻防の行方は、近いうちにはっきりとするはずだ。