ビッグモーター事件の「真の被害者」は誰なのか
9月、損保ジャパンが騒動後初の記者会見を開いた。白川儀一社長は深々と頭を下げ、ビッグモーターで不正請求が発生している可能性を認識しながら同社との取引を再開したことを謝罪。「大きな経営判断ミスをした」として引責辞任することを発表した。
この日の午後、関東地方には台風13号が上陸し、いたるところで線状降水帯が発生していた。奇しくも会見の時間帯には、千葉県や茨城県が記録的な大雨によって大規模な洪水被害に見舞われ、多くの家屋や車が水没。JR外房線では線路の土台が崩れ、列車が運休になるなどの混乱も起こっていた。
火災保険や自動車保険を取り扱っている損保会社からすれば、まさに多くの契約者(お客様)がリアルタイムで過酷な災害に見舞われていたわけだが、よりにもよってなぜこんな日に会見をセッティングしたのか……。
私は、台風関連の警報が社長の頭上に映し出されるたびに、はがゆさと疑問を感じながら、その長い会見を見ることになった。
損保ジャパンは被害者とは言えない
保険金を不正請求された損保ジャパンが、必ずしも「被害者」とは言えない、ということは明らかだと思う。
すでに報じられているが、両者の関係をあらためておさらいしておきたい。損保ジャパンは事故を起こした保険契約者にビッグモーターを紹介し、車を同社の修理工場に誘導していた(入庫誘導)。損保ジャパンがビッグモーターとの関係を断ち切れず、事故車の入庫誘導を続けたのは、大口保険代理店である同社から、より多くの自賠責保険契約を獲得することが主目的だったからだ。
これまでの報道によると、事故車を1台ビッグモーターに入庫すれば、自賠責の契約を損保ジャパンに5件渡すという取り決めがあったという。ビッグモーターは修理による売り上げ、損保ジャパンなどの損保会社は自賠責契約を獲得できる。つまり、不正請求の「被害」の先には、自社にとっての「メリット」があったということになる。