適度な飲酒量なら頭痛や二日酔いは起きない

なぜアルコールは人体に悪影響を及ぼすのでしょうか。

体に入ったアルコールはまず肝臓で分解され、「アセトアルデヒド」という毒性物質に変換されます。その後、酢酸という無害な物質にさらに分解されて血中に入り、全身を巡りながら汗や尿として体外に排出されます。適度な飲酒量の場合はこの過程がスムーズなので、頭痛や二日酔いは起きません。

しかし過剰に摂取すると、大量のアセトアルデヒドが体内に発生し、肝臓で酢酸に分解する処理が追いつかなくなり、そのまま血液中に流れ出てしまいます。血液に乗って全身を巡るアセトアルデヒドの毒性により、頭痛や吐き気、動機、つらい二日酔いが起こります。また、広がった血管からは水分が漏れ出し、血管を取り巻く組織や脳にむくみが生じて神経を圧迫するため、アルコール頭痛を発生させるのです。

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大量摂取には「ウェルニッケ脳症」のリスクもある

飲酒をすると記憶がなくなる、いわゆるブラックアウトを起こす方も要注意です。

アルコールを大量摂取すると、脳が萎縮する「ウェルニッケ脳症」を発症するリスクが高まります。ウェルニッケ脳症になると脳幹部に微小な出血を起こし、細かい眼の震えが出る眼球運動障害や、意識障害、ふらつき(失調性歩行)といった、様々な症状が急激に出現します。発症直後にチアミンを大量に点滴すれば回復することができますが見逃されることが多く、死亡率は10~17%と推計されています。

死亡に至らずとも、その後遺症で認知症のような症状を特徴とするコルサコフ症候群へ移行する率は56~84%と高いです。コルサコフ症候群は一度発症すると改善・回復の可能性はほぼないので、ウェルニッケ脳症にならないことが最も重要です。(厚生労働省 e-ヘルスネット「ウェルニッケ・コルサコフ症候群」)

アルコールが体から抜ける時間は、個人によって異なります。

医学的には「体重1kgあたり1時間で約0.1gのアルコールを分解する」と考えられており、同じ量のお酒を体重60kgと80kgの人が飲んだ場合、80kgの人の方が早くアルコールを分解できると考えられています。

しかし、体重はあくまでも目安で、肝臓にアルコール分解酵素をどれだけ持っているかによって変わります。特に日本人は分解酵素の活性が弱く、お酒に弱い人が多い人種といわれています。