健康を守りながらお酒を楽しむにはどうすればいいのか。肝臓専門医の浅部伸一さんは「酒好きの人はアルコール性肝障害になるリスクが高い。必要なのはお酒を飲まない『休肝日』を作ることではなく、お酒の総量を抑えることだ」という――。

※本稿は、浅部伸一『長生きしたけりゃ肝機能を高めなさい』(アスコム)の一部を再編集したものです。

乾杯
写真=iStock.com/ViewApart
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肝臓はひっそりと悲鳴を上げている

お酒が好きで、しかも飲むときには揚げ物や糖質の多いものを一緒に食べることが好きな人。加えて肥満の人は、「アルコール性肝障害」になるリスクがとても高いでしょう。

アルコール性肝障害とは、お酒の飲みすぎが原因の「アルコール性脂肪肝」、それが高じた「アルコール性肝炎」、さらにひどくなった「アルコール性肝硬変」です。

もともと肥満の人は、肝臓の細胞にも脂肪がたまっているのです。つまり「脂肪肝」です。脂肪肝によってアルコールを解毒する力が弱っているのに、そこにさらにアルコールを注ぎ続ければ……、当然ですが肝障害は進んでしまいます。

また、ついつい深酒をして、深夜まで飲み続けるようなことはありませんか。もちろん飲み始める時間帯にもよりますが、一般的には深夜まで飲み続けるのは肝臓に負担をかけます。夜というのは、体内の代謝としては脂肪をためる時間帯だからです。

アルコールの毒を分解する重要な臓器

お酒を飲むとアルコールの成分はすぐに腸で吸収されて、血液の中に入ります。その9割は肝臓の代謝機能で分解され、1割は尿や息で排出されます。肝臓で分解されたアルコールは、「アセトアルデヒド」という物質に変わります。

このアセトアルデヒドが、実は体にとっては有害物質。体内にアセトアルデヒドが長時間あると、二日酔いや悪酔いの原因になります。アセトアルデヒドも水や二酸化炭素などに分解されて、やがては体の外に出て行きます。

ところが、このアセトアルデヒドを分解する時間が人によってかなり違います。アセトアルデヒドを分解する能力が、高い人と低い人がいるのです。

分解能力の高い人は、いわゆる「お酒に強いタイプ」。飲んでも全然変わらない人です。分解能力が低い人は「お酒に弱いタイプ」。飲めばすぐに顔が赤くなる人です。その中間に、まあまあの能力で「そこそこは飲めるタイプ」がいます。

3つのうちのどのタイプなのかは遺伝で決まっています。つまり、生まれながらの体質です。日本人の約1割は「弱い」タイプだといわれています。

毒の処理能力は生まれながら決まっている

遺伝で決まっているのは、アセトアルデヒドを代謝する「アセトアルデヒド脱水素酵素」の働きです。この酵素が強い人と弱い人がいるわけです。

お酒に強いタイプなのか、弱いタイプなのかは生まれつきの体質で決まっているので、体質改善でお酒に強くなることはありません。「飲む機会が増えて、ずいぶんお酒に強くなったよ」と言う人もいますが、根本的な体質が変わったわけではありません。