アルコール度数の高い「ストロング系チューハイ」の販売を縮小する動きが出ている。低価格で酔えるコスパの良さで親しまれているが、どこに問題があるのか。筑波大学医学医療系の吉本尚准教授(地域総合診療医学)に、酒ジャーナリストの葉石かおりさんが取材した――。
アルコール度数9%の「ストロング系チューハイ」
撮影=プレジデントオンライン編集部
アルコール度数9%の「ストロング系チューハイ」

約15年で日本人に浸透した「ストロング系」

2008年、キリンの「氷結ストロング」の発売以来、2009年にサントリーの「-196℃ストロングゼロ」、そして2011年にアサヒビールの「アサヒ スパークス」と、いわゆる“ストロング系”と呼ばれる高アルコール濃度のチューハイが次々と発売された。

一般的にストロング系チューハイとは、アルコール度数が8%以上のものを指す。フルーティながらも、飲み応えのあるガツンとした飲み口から人気に火がついた。

当初は酒に強い男性がこぞって飲んでいた。しかし、ぶどうや桃といった季節のフルーツを使ったテイストのものが出始めると、これまであまりストロング系に手を出さなかった若い女性たちも「フルーティで飲みやすい」からと手に取るようになっていった。

今だからこそ言えるが、私もストロング系を飲んでいた時期がある。会食を終えた帰り道、バーに行くのはだるいが、何となく飲み足りない。自宅に焼酎や日本酒はあるが、今から飲むにはアルコール度数がほどほど高くて、軽く飲めるものがいい。そんな時、コンビニでもすぐ手に入るストロング系は、ちょうどよかったのだ。だが「ちょうどいい」というのは酔っ払いの幻想で、仕上げにストロング系を飲んだ翌朝は、決まってプチ二日酔いになっていた。

医師たちは「危険だ」と口をそろえた

「もしやストロング系って、カラダに良くないのでは?」

そんな疑問を抱き始めた頃、取材先の医師から「ストロング系は危険なので、飲まないほうがいい」という話を聞いた。注意喚起したのは1人だけではない。多くの医師たちが同じことを口にするようになり、「これはどうやら、本気で飲まないほうが良いのだな」と実感。以来、ストロング系とは疎遠の生活を長くしてきた。

ストロング系の味すら忘れかけていた2024年1月、アサヒビールが「今後売り出すストロング系の度数を8%未満に抑える」というニュースが飛び込んできた。次いでサッポロビールも、ストロング系の新規発売をしない方向だという。

これはやはり2月19日に発表になった国内初の「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン(以下、飲酒ガイドライン)」が影響しているのだろうか? だが、筆者の周囲を見ても、ストロング系の根強いファンが未だいるのは事実。今一度、ストロング系の危険性について、筑波大学医学医療系准教授で、「飲酒ガイドライン」の策定にも携わった吉本尚さんにお話をうかがった。

吉本尚(よしもと・ひさし)1979年生まれ。北海道出身。2019年1月、北茨城市民病院附属家庭医療センターに総合診療科で日本初となるアルコール低減外来を開設。その後、筑波大学附属病院でもアルコール低減外来を開設した
本人提供
吉本尚(よしもと・ひさし)1979年生まれ。北海道出身。2019年1月、北茨城市民病院附属家庭医療センターに総合診療科で日本初となるアルコール低減外来を開設。その後、筑波大学附属病院でもアルコール低減外来を開設した