「生理痛に無頓着」な人は「更年期にも無頓着」

私が日本に来て多くの女性たちの相談を受けるようになって、一番に驚いたことが、「生理痛を放置していること」です。

そして、2番目にショックだったのが、「更年期にも無頓着」ということです。

生理痛があってもそのまま我慢しているのと同じように、更年期の不調に対しても、事前に特別な対策をすることなく、メンタルや体の不調に耐えながら、これまでと変わらない負担の仕事や家事・育児を続けている……同じアジアの民でも、なんと違うものかと驚いたものでした。

とはいえ、生理痛が少ない中国女性の場合、更年期も同じように精神的な不調に陥る人はごく少数です。とにかく気虚が少ないためでしょう。私の同級生のなかでも、更年期に精神的に参ってしまった、という人は皆無でした。

中医学を専門とする先生は長生きの傾向

ではなぜ、中国女性の老化が緩やかなのか?

それについてのヒントとなる研究を1つ、ご紹介しましょう。私の大学時代の同級生が行なっている研究です。

その同級生は、私の母校である北京中医薬大学の教師を対象に、西洋医学の先生、中医学の先生、両方を教えている先生の3グループに分け、それぞれの病気の有無、大学を退職した年齢、健康寿命、死亡年齢、死因を調査・分析しています。

ちなみに日本とは違い、中国の大学では有能な先生には定年がありません。心身ともに問題がなければ、いくつになっても勤務することが可能です。中医学に特に貢献のあった人には「国医大師こくいたいし」という称号が与えられ、80代でも現役で臨床や研究を行ない、教壇に立っている教授もたくさんいます。

まだ研究は調査途中ですが、途中経過でわかったことを同窓会の折に教えてくれました。その同級生いわく、「中医学を専門とする先生たちのグループが、抜きんでて元気で長生きだった」とのことでした。他のグループと比べて健康寿命も長く、亡くなる前日まで仕事をしていた先生がほとんどであることもわかりました。

それに対して、西洋医学の先生たちは、中医学の先生たちよりも短命で健康寿命も短く、認知症の発症率も高かったといいます。

当然のことですが、中医学の先生たちは、全員、実生活のなかでの漢方的な養生の実践者です。そのなかに、すい臓がんを患った教授がいましたが、発症から15年以上生き続け、亡くなる前日まで学会で講義を行なっていたとのことでした。

漢方は、そもそも不老長寿を目指すもの。このエピソードからは、改めて、養生が持つ「元気で長生き」の効果を実感することができました。

写真=iStock.com/Tim Chow
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