つくり上げたのは、R&D部門である。ハウス食品には、ソマティックセンターという研究の専門部署があり、基礎研究と製品開発研究の人員を約300名も擁している。ここの業務用ゼリーソース開発の人員が、後に一般消費者向けの「のっけてジュレぽん酢」の開発にも携わったのだ。

ただし、06年当時はまだ、一般家庭向けにこの製品を出していこうという意図はなかったそうだ。というのは、家庭での食事の際に調味料を使うのは食べる直前が普通で、居酒屋の突き出しのようにつくり置きして長時間放置しておくことはほとんどないからだ。

それではなぜ家庭向けにこのような特殊な調味料を出していこうと考えたのだろうか。それは、同社のお家事情が影響している。

ハウス食品では、1995年から「冷しゃぶドレッシング」という液体調味料を市場化している。この製品は最盛期に年間15億円ぐらい売れるヒット作だったが、次第にその成果も陰りを見せてきた。液体調味料事業を何とかしなければならないという大きな課題を意識するようになったのだ。

この冷しゃぶドレッシングには、用途の限定という問題点があった。いうまでもなくこの製品は冷やしたしゃぶしゃぶ専用の調味料だ。このような極端な用途限定型製品は不況期には好まれない。最初は物珍しさで購買されたものの、次第にポン酢で済ませてしまう消費者が増えてきたのだ。

そこで汎用性の高いポン酢に取り組もうということになったのだが、この分野にはミツカンの牙城がそびえていて、真っ向勝負は難しい。そこで業務用で実績のあったゼリーソースに白羽の矢を立て、その利点を生かしながら汎用性の高い調味料ができないものかと思案を巡らせ、「のっけてジュレぽん酢」が誕生した。