カツアゲされなければOK、多様性ある土地が子育て向き

少子化対策としてはたとえば保育園が多いこと、無償の学習塾があることが挙げられる。

成績が優秀でも家庭の経済状況が厳しくて進学できない子供たちを対象に、同区は11年前に高校進学塾「足立はばたき塾」を開講。これまで900人以上が利用し、切れ目のない支援を続行するため、今年から大学受験のためのゼミをスタートした。英語や数学の個別指導が週に1回行われ、高校3年間を無償で通うことが可能だ(学力や収入の審査がある)。

「うちも本人が希望して入塾の条件に合えば、将来利用できたらいいなと思います。それに私の三十数年以上の記者生活で感じたことですが、子供が犯罪に巻き込まれたり、加担したりする事件は、コンビニもないような上品な高級住宅街で起こることが少なくないんです。極端な意見かもしれませんが、庶民的な地域でも悪い人にカツアゲされなければOKだと思っていて。多様性の時代ですから、おじいちゃん、おばあちゃん、外国人、多少なやんちゃな人がいる地域の方が、いろんな交流や経験ができるし、厚みのある人間に育つのではないかと思っています」

写真提供=中本裕己
産経新聞社「夕刊フジ」編集長・中本裕己さん(59)家族

まさかの越境入園。半年後にようやく区内の認可園へ

さらに、と、中本さんは語気を強める。

「岸田総理が提唱する『異次元の少子化政策』って、お金をばらまくのが優先で、ドラスチックな解決策になっていないのはないでしょうか。保育園にしても、妻は非正規労働者で、出産前後に働くのを中断していたので入園の優先度が低く、最初足立区内の認可園に入れなかった。隣の葛飾区に越境入園して、働いている実績を作って、やっと半年後に近所の認可園に入れました。岸田さんが異次元をうたうからには、実績がなくても入園できるようにしないと」

今でこそ、イクメンパパが増え、男性社員が育休を取るのは自然なことになったが、それでも育児のメインは母親が担うことが多い。しかもいまだに育休や時短勤務は女性のキャリア向上の阻害要因になることもある。

「イクメンとはいっても、父親の育児はほとんどがサポート程度にならざるをえません。私の場合、長男が生まれた時はコロナ禍の真っ最中で在宅勤務にシフトできたのが幸いでした。例えば、ウェブ会議中、画面が見切れたひざ下で子供を抱っこしてあやしたり、ミルクを飲ませたりといった育児は、コロナでなければできなかったので。定年後は仕事の一線から外れるでしょうから、早く帰宅して保育園のお迎えを私が担当できます。でも20代や30代の働き盛りパパだと、難しいかもしれません」