なぜ「麦茶」が3.5倍も売れるようになったのか
猛暑の時季にありがたい清涼飲料水。全国清涼飲料連合会が発表した「清涼飲料水統計2024」では約4兆4460億円(前年比107%)という巨大市場でもある。
全国清涼飲料連合会「数字でわかる!見て学ぶ!2024」
その中で販売金額の多いカテゴリーは1位が「コーヒー飲料」(シェア率21%)、2位が「茶系飲料」(同19.2%)となっている。こうした清涼飲料水市場の中で、近年最も伸びているのが茶系飲料の中の「麦茶飲料」だ。麦茶飲料の市場規模は約1400億円(2023年)で、この十数年で3.5倍に拡大した。
昔から夏の定番飲料だった麦茶が、これほど伸びたのはなぜか。最大ブランド「伊藤園 健康ミネラルむぎ茶」(2023年の年間販売量約3700万ケース)を持つ、伊藤園に聞きながら考えた。
家族みんなでゴクゴク飲みやすい
「健康ミネラルむぎ茶は今年1~6月の上半期でも前年比約104%(売上金額ベース、伊藤園調べ)と好調です。清涼飲料水の中でも好調な商品です」
「健康ミネラルむぎ茶」などのブランド責任者である黒岡雅康さん(伊藤園 マーケティング本部 麦茶・紅茶・健康茶ブランドグループ ブランドマネジャー)はこう話す。
なぜ麦茶、なのか。
「いくつか理由が考えられます。商品特徴としては、①カフェインゼロなのでお子さんからお年寄りまで家族みんなで飲める、②やかんで煮出したような昔ながらの甘香ばしさを感じるので水よりもゴクゴク飲みやすい、③日本人に馴染みのある麦という素材の安心感、などが支持されています」(黒岡さん)
もともと麦茶は昭和時代から夏の風物詩だった。
「当時は各ご家庭で、やかんで煮出して作られる飲料でした。冷蔵庫に入った、麦茶入りポットを思い出す方も多いのではないでしょうか。このやかんで煮出した、甘く香ばしく、すっきりとした味わいを、ペットボトルでも再現したいと思います。いわば“お母さんが作っていた味”を意識しています」(同)