麦茶市場が拡大した2つの要因

「健康ミネラルむぎ茶」は、2023年4月に累計販売本数が130億本を突破したという。RTD(=READY TO DRINK:ふたを開けてすぐ飲める飲料)としての最初は1988年に発売した缶入りむぎ茶飲料から。

当時の市販飲料は缶が中心で、現在主流の500ミリリットルのペットボトルが容器として解禁されたのは1996年。2012年に現在のブランド名となった。

1990年代の飲料はコーヒーやコーラなどが強く、茶系飲料は「烏龍茶」(サントリー食品)や「爽健美茶」(日本コカ・コーラ)といったウーロン茶やブレンド茶に勢いがあった。麦茶は家庭でつくるものというイメージで、“わざわざ買う飲料”として選ばれにくかった。

市販飲料としての麦茶が見直されたのは、十数年前からだ。

「2010年代の2つの出来事が市場拡大のきっかけとなりました。2011年に起きた東日本大震災と2018年の記録的な猛暑です。2011年は災害時の飲料水への不安もあり、2リットルの麦茶ペットボトルを冷蔵庫に常備したり、保管したりする家庭が急増しました。

また2018年は、気象庁が“災害級”という言葉を用いて猛暑への警戒を呼び掛けた年。埼玉県熊谷市の41.1℃をはじめ、国内最高気温の上位には同年が軒並み入っています。この時はパーソナルサイズ(500ミリリットル以上)の麦茶の売れ行きが拡大しました」(同)

なぜ容量が大きいのか

RTDの麦茶は2014年から右肩上がりで伸び、2018年の猛暑で一段と拡大した。コロナ禍初年の2020年は前年減となったが2021年には回復。それまでは夏季だけの季節商品だったが、この間に通年商品として定着した。

水分補給ニーズの高まりを受けて携帯用サイズも大きくなり、「健康ミネラルむぎ茶」は600ミリリットル(自販機向け)、650ミリリットル(スーパーなど量販店向け)、670ミリリットル(コンビニ向け)と販路別にきめ細かく商品供給を行う。

販路別に容量が異なる。携帯用サイズはこのほかに、280、350ミリリットルがある。
携帯用サイズはこのほかに、280、350ミリリットルがある。また、ラベルレス商品や、容器の形状が異なるモノ、冷凍ボトル等季節製品なども。希釈缶や紙パック、ティーバッグや粉末タイプなども販売している(画像提供=伊藤園)

「お客さまから『こういったタイプの商品が欲しい』という要望に応えているうちに大容量化しました。600ミリリットルは自販機に入る大きさの最大値です。量販店向けの650ミリリットル、コンビニ向けの670ミリリットルなど、多様化するニーズやライフスタイルに対応した販売チャネルの特性もあります」(同)