総務省の官僚トップに初めて「技官」が起用された
中央省庁(霞が関)の役人(キャリア官僚)の人事など、読者はほとんど興味がないかもしれないが、この夏、年に一度の恒例の異動で、霞が関の住人がびっくりするような仰天人事が発令された。
「びっくり」の中身は、総務省の事務次官に初めて「技官」が起用されたこと。どれほど「びっくり」なのかを順次、説いていく。
中央省庁の事務方トップの事務次官は総合職の「事務官」の指定席とされており、霞が関広しといえど「技官」が就任するケースは技監ポストを擁する旧建設省の流れを組む国土交通省で慣例的にみられる程度だ。
旧自治省、旧郵政省、旧総務庁の3省庁を統合した総務省では、2001年の発足以来、それぞれの省庁出身の「事務官」が交互に事務次官に就いており、「技官」が事務次官ポストに割って入る余地はまったくなかった。
3年前の「総務省接待事件」で当時の旧郵政省出身の総務省幹部が軒並み更迭され、適齢期の「事務官」が払底した事情はあるが、霞が関人事を握る首相官邸の英断ともいえる。
「事務官」「男性」「東大卒」といった官界ヒエラルキーが厳然と存在する中、霞が関のダイバーシティー(多様性)を具現化したシンボルにもなりそうだ。今後、霞が関で「技官」が活躍する場所が増えることが期待され、地方自治体や民間の人材登用にも好影響を与えるかもしれない。
「事務官」に優るとも劣らぬ「技官」の竹内芳明氏
新しい総務事務次官に就任したのは、竹内芳明氏、62歳。
香川県多度津町の出身で、高松高専(現香川高専)、東北大工学部通信工学科を卒業し、1985年に旧郵政省に入省。宇宙通信政策課長、電気通信技術システム課長、移動通信課長、技術政策課長、電波政策課長、電波部長など技術畑の要職を次々に務め、2018年にサイバーセキュリティ統括官、さらに総合通信基盤局長と局長級ポストを歴任、そして2021年に次官級ポストの総務審議官に就いた。