国家公務員倫理規程が禁じる「利害関係者からの違法接待や金品贈与」を受けたとして、事務次官の有力候補で総務官僚ナンバー2の谷脇康彦総務審議官(郵政・通信担当、84年旧郵政省入省)を筆頭に、吉田眞人総務審議官(85年同)、秋本芳徳情報流通行政局長(88年同)、奈良俊哉内閣官房内閣審議官(86年同)ら、旧郵政省出身のキャリア官僚が軒並み懲戒処分を受けた。
この間、東北新社による放送法の外資規制違反事件も露見。さらに、時を同じくしてNTTによる接待問題が明らかになり、総務省は大混乱に陥った。
そして、谷脇氏をはじめ旧郵政人脈の主要官僚が、辞職や更迭で相次いで総務省を去るという、かつてない大事件に発展した。ちなみに、情報流通行政局長や総務審議官(国際担当)の経験者で、女性で初の首相秘書官を務めた山田真貴子内閣広報官(84年同)も接待事件に関わったとして辞職した。
情報通信行政を担う旧郵政人脈が壊滅的な打撃を受ける中、空席となっていた総務審議官ポストに就いたのが、総合通信基盤局長だった「技官」の竹内氏である。「接待事件」とは無縁だったことが幸いしたようだ。
それから3年間、機能不全に陥りかけた情報通信行政の屋台骨を懸命に支えてきたのである。
旧郵政人脈の「謹慎組」が続々復権
「接待事件」では、幹部のみならず、審議官以下課長クラスの多くも懲戒処分を受けた。「総務官僚は、総務省に影響力の強い菅首相の息子に誘われたら断れない」との同情論もあったが、処分を回避する理由にはならなかった。
国家公務員の懲戒処分は免職、停職、減給、戒告の4段階あり、戒告を受けると1年間、減給処分は1年半、停職の場合は2年間、昇任できない。
ところが、今夏の人事で、謹慎組が続々と復権したのだ。
減給処分になった湯本正信氏(90年同)は総合通信基盤局長、戒告処分の豊嶋基暢氏(91年同)は情報流通行政局長、同じく玉田康人氏(90年同)は局長級の総括審議官に就いた。
いずれも情報通信行政を担う責任者のポストである。「3年間の喪」が明けたというわけだ。
総務審議官には今川拓郎総合通信基盤局長(90年同)が昇格し、国際戦略局長には次の次の事務次官を視野に入れて官房長から転じた竹村晃一氏(89年同)が控える。
ようやく旧郵政人脈の人事が回復基調に乗ったように映る。
ネットの偽情報対策、巨大IT企業の規制、ネット受信料の具体化、NTT法の廃止問題など懸案が山積する中、竹内芳明事務次官以下新たな布陣が難題に立ち向かうことになる。いささか停滞していた観のある情報通信行政に新しい風が吹くことが期待される。