親は共働き、子どもは2カ月の夏休みがあるフランス
夏休みをはじめとした、子どもたちの「余暇の過ごし方」が注目を集めている。文科省は2021年、18年分の追跡調査を分析し、幼少期の体験活動が成長後の自尊感情や外向性、精神的な回復力などに良い影響をもたらしているとの結果を発表した。
※出典:文部科学省「令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告」 令和3年9月8日
しかしその体験活動の有無や充実度は、生まれた家の考え方や慣習、世帯収入などに左右されやすい。海外で長期サマーキャンプに参加する子がいれば、どこにも外出せず自宅周辺で過ごす子もいる。この「体験格差」を埋めるため、地域・学校・家庭が協働して、多様な体験を可能にする環境づくりが求められている。
バカンス大国として名高いフランスでは、余暇はその重要性が社会全体で認められ、豊かな体験とすべく官民でさまざまな支援が組まれている。子どもたちの夏休みは2カ月間と長いが(年度終わりの7月頭から新学期の始まる9月頭まで)、共働きが主流の親たちは同じ長さの休みを取れないため、支援を活用してその時期を乗り切る。勤め先の福利厚生部門や市町村が運営する、子どもだけの旅行パックなどもある。
日本と同様に親の経済力や社会的な状況による格差も存在するが、それを超えて子どもたちの余暇を支える努力も盛んだ。家族向けの給付をつかさどる公的機関「全国家族手当金庫」は、児童手当や住宅手当、保育所運営支援と並び、家族の余暇支援を活動の重要な柱としている。
なぜフランスでは子どもの余暇が重要視され、多様な支援が存在するのだろうか? その経緯と発想、支援の実態を見ていこう。
「余暇は人としての大切な権利」の共通認識
フランスの余暇をめぐる制度や活動では、ほぼどこでも同じ言葉で、支援の必要性が語られている。それは「余暇は守られるべき、大切な権利」というものだ。
その源流は20世紀前半までさかのぼる。国連最古の専門機関「国際労働機関(ILO)」が1919年に生まれ、諸国で労働者の権利が改善されていく中、フランスでも「全雇用労働者を対象とした、2週間のまとまった休暇」を年次休暇とする法律が成立した。
しかし当時の労働者は働き詰めの生活がデフォルトで、休み方も休む意義も知らず、余暇を「無駄な贅沢品」とネガティブに見る人も多かった。その時に政府が打ち出したのが「余暇は人としての尊厳である」というメッセージ。年次有給休暇の取得促進を担った大臣レオ・ラグランジュは、こう発言したと伝えられている。