国による「11歳」対象のサマーキャンプ参加支援制度が開始

経済的な事情で国民のバカンス予算が影響を受けていることは、国も把握している。スクール・ポピュレール・フランセなどの団体との連携をより強化しているほか、国としてできる対策を新たに打ち出している。

2024年には国民教育・若者省により、フランスの中学1年生にあたる11歳の子どもに向けた、サマーキャンプ参加支援制度「パス・コロ(Pass colo)」が立ち上がった。同年4月、所得や世帯人数などの条件に則して対象となった約60万の世帯に、200〜350ユーロのバウチャーの利用案内が国から郵送されている。支援対象には貧困世帯だけではなく、所得の中間層も含まれた。バウチャーは国と提携した事業者のプランで使用可能とされ、専用のカタログサイトで検索できる。最短4日間のキャンプを、在住地や望む滞在タイプ(海/山/田舎/都会、スポーツ/カルチャー/サイエンス、障害児対応など)から選択できる内容だ。

※出典:国民教育・若者省「パス・コロって何?」「2024年夏以降のパス・コロの展開」

国民教育・若者省はこのほか、夏休みに学習支援を行う「学ぶバカンス(Vacances apprenantes)」を主導している。教員側が計画し、生徒側は任意参加制だが、夏休み前の成績や家庭の状況などを考慮して、参加の望ましい生徒に学校から声をかける。学習だけではなく、自転車遠足による環境意識の醸成や、オリンピック・パラリンピックの観戦など、余暇に近い内容もある。

※出典:国民教育・若者省「学ぶバカンス 2024年の夏の開校」

オリンピックのロゴが入ったパリ市庁舎のファサード
写真=iStock.com/yann vernerie
※写真はイメージです

小学生を対象にした学童保育も行われている

これとは別に学校休みの間には、小学生を対象にした市町村運営の学童保育が終日預かりで行われている。利用料は世帯所得に則した応能負担で、多くの場合は昼の給食や午後のおやつもそこに含まれる。プールや映画鑑賞、日帰りバス遠足など多彩なアクティビティが用意され、共働き世帯には欠かせない生活インフラとなっている。

中学生には同様の学童保育はないが、自治体は代わりに「スタージュ」と呼ばれる短期間の文化・スポーツのアクティビティを提案。こちらも世帯所得に則した応能負担で、遊園地への日帰り旅行やアスレチック、カヌー体験などは、募集開始とともに枠が埋まる人気を博している。

以上、「バカンス大国」と言われるフランスの、夏休みの余暇支援を概観した。このような取り組みが功を奏しているのか、ユニセフが2020年9月に発表した「先進国の子どもの幸福度」の国別ランキングで、フランスは33カ国中7位と上位にある(日本は20位)。ちなみにフランス以外にも、夏のバカンスを重視するヨーロッパの国々が上位に並んだのは、偶然ではないだろう。

※出典:ユニセフ・レポートカード16「先進国の子どもの幸福度」 

人生や人格形成における余暇の重要性を認め、明日の社会を作る子どもたちの体験格差に、多角的な対策を打つフランス。その思想や実践は、日本にもヒントになる点があるはずだ。

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