世界人権宣言で「余暇」は人権の一つとして明記

「労働者や農民、失業者には余暇を通じて、生きる喜びと、人としての尊厳の意味を見出してほしいのだ」

この余暇の言語化が、今に続く「バカンスの意義」の基盤となったのだ。その後に第2次世界大戦を経て、「すべての人民とすべての国とが達成すべき共通の基準」として1948年に国連で採択された世界人権宣言では、第24条で余暇が人権の一つとして明記された。

第24条 すべて人は、労働時間の合理的な制限及び定期的な有給休暇を含む休息及び余暇をもつ権利を有する。
※出典:法務省「世界人権宣言70周年」パンフレット

諸国が戦禍を拡大させ、人権を踏みにじってきた国際的な反省の中に、「余暇を尊重しなかったこと」も含まれていたのである。

1950年以降は戦後復興の経済成長に乗り、庶民に休暇を楽しむ余裕が生まれ、フランスのバカンス文化も拡大・定着していった。法定年次休暇は1週間ずつ延長され、2024年の今では全雇用労働者に5週間の休暇取得が、雇用主の側に義務付けられている。

2024年のカレンダーとミニチュアのビーチグッズ
写真=iStock.com/new look casting
※写真はイメージです

「重要な公共政策」としての家族旅行への支援

大人がしかと休むフランスだが、子どもたちの休みはさらに多く設定されている。国の定める学校カレンダーでは、「7週間の授業ごとに2週間の季節休み」が春・秋・冬に計4回あり、それを地域ごとに3つのゾーンに分散。加えて年度の境目に当たる夏は、7月上旬から8月末までほぼ丸々2カ月が、全国共通の長期休暇となる。

この長い休みの過ごし方にも、前述の「余暇は大切な、守られるべき権利」という価値観が適用され、さまざまな支援が張り巡らされる、というわけだ。

子どもたちの多くは親や親族と夏のバカンスを過ごし、長期滞在の旅行やレジャーを楽しむ。調査会社オピニオン・ウェイの3000人調査によると、回答者の67%が7、8月にバカンスを取得。その8割以上がフランス国内に旅行し、平均8日間の長期滞在をしている。

※出典:バカンス・バロメータ(Atout France / Opinionway

このような家族旅行に対して公的機関の支援があるのが、バカンス大国フランスの特徴と言えるだろう。中核を担うのは、家族向けの給付をつかさどる「全国家族手当金庫」だ。国際関係局副局長のカトリーヌ・コロンベ氏は語る。

「フランスにおいて余暇支援は、歴史的に重要な公共政策です。我々の組織でも1950年代から、家庭外保育と同じ『社会福祉部門』に組み込まれ、当初はこの部門の3分の1の予算を充てたこともありました」