余暇の過ごし方には経済的不平等が表れやすい

なぜ家族旅行を、公的機関が支援するのか? その問いには、間髪を入れず明瞭な答えが返ってきた。

「バカンスは権利であり、子どもたちの健全な成長に欠かせません。楽しい思い出を共有することで親子関係をよりよくたもてますし、子どもたちには広い社会を学ぶ機会になります。また家族で日常生活を離れ、他者と触れ合うことで、社会的な孤立の予防にも繋がるのです」

そのような効能を認め、公的機関として支援するのは、余暇の過ごし方に経済的な不平等が表れやすいからでもある。バカンスに関する調査では、世帯収入の高い家庭ほどより遠い場所に旅立ってより長く滞在する一方、収入の低い世帯はバカンスに出ても近場で短い滞在になるか、旅行自体を諦める実態が明らかになっている。格差を認めながら放置することは、平等を国是と掲げるフランスの行政には許されないのだ。

6万人の子どもが「国が支援するパック旅行」に参加

「家族手当金庫の支援は多くの場合、現物給付です。主に困窮世帯を対象に、我々と提携する約5800件の観光施設に8日間、滞在費の2割の自己負担(上限額あり)で宿泊できる仕組みを作っています。世帯の状況や収入によって3種類の支援があり、1つ目は対象世帯が自主的に滞在先を選ぶもの。2つ目はソーシャルワーカーが対象世帯のニーズに合わせて旅行の形を決め、提案する形。3つ目は子どもだけが参加できるパック旅行『コロニー・ド・バカンス』で、こちらは2800件ほどの滞在プランを用意しています」(コロンベ氏)

2023年、家族手当金庫がバカンス支援に充てた予算は8400万ユーロ(約143億円)。インフレが悪化した2022年からは、バカンス先が自宅から200km以上離れていれば100ユーロ(約1万7000円)、400km以上であれば200ユーロ(約3万4000円)の交通費手当を設けている。

早朝のシャルルドゴール空港
写真=iStock.com/stellalevi
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2022年に家族手当金庫の支援を受けてバカンスを享受した家族は11万5000世帯。6万人の子どもたちがコロニー・ド・バカンスに参加した。

このような親子の旅行支援を「贅沢だ」と糾弾する声は、フランスでは聞かれない。

「困窮している家族にとって必要な支援とのコンセンサスが、社会全体で取れています」(コロンベ氏)